「痴人」
「お前の夢を見ない日はない」

尤もらしく言い訳を。


なじってくれ

もっともらしい言い訳を、口にしようとする俺を。

例えばそれが正当な理由であったとしても。
どうかしちまってるよ、俺は。

あぁ、どういう理由だろうな。

まぁいつもの事だろ。
あのラブコックがうざったくくっついてるのも。
あんたは留守番と言って、俺を置き去りに上陸するのも。

そうだ、日常だ。

だからどうってことない。



夕刻には帰るとか言っておきながらコックとナミは戻らない。
ナミは俺をしつこく街へと誘っていたが相手にしなかった。
女の買い物と風呂は長くていけねぇ。
こっちは待つ身だって事を考えて欲しい。
そこで荷物持ちとして選ばれたのはコック。
「今夜は帰らねぇ、絶対に。」
とか言っていたが、そんなことはあるまい。一人で帰らない訳じゃあるまい。




接岸した船の上は微かに揺れている。それにももう慣れた。




今何時だ、と思って堅い床から起きあがる。
午睡で狂った時間軸が、だんだんと正気を取り戻す。
さっきまで青かった空がもう紫色。


「夕飯。」




まだ誰も戻ってきていない。
見張りがコレだから何とか言われる前に目が覚めたのは久しぶりだ。

キッチンへ立った。
昼間ッから呑んだりしないでよ、と釘を刺されたが、もう昼より夜に近い。
解禁だ。


一口目を口に含んだとき外で足音。
アレはルフィとウソップだ。



「ゾーロー。飯食いに行こうぜー。」


勢いよくドアを開けたのは船長。
外に行くのか、と訊くとサンジは職場放棄らしい。


「ナミさんとご飯食べてくるからお前ら腹減ったら指でもしゃぶってろ。」


最近覚えたサンジの真似を披露しながら、伝言を伝えた。
「船から降ろしちまえ。」と毒づいたものの、
案外今夜は還らないと言うのも生半に嘘ではないらしい。

「だーかーらー」

後ろからウソップが現れ、指の間ではためくのは10000ベリー。

「ナミからか。」

そう問ったがあの強欲がよく金なんかよこしたなと半ば関心。
いやいやと首を横に振る。


サンジから。


どうやらお前らは勝手にやっておけ、と言うことらしい。
気にいらねぇ。
あいつの思惑の上で踊らされるのが気にいらねぇ。




朝帰りしやがったら只じゃおかねぇ。




何度も食事に誘う二人に手を振り、傍らにまだなみなみと入った瓶を置き待つ。
体内に入るアルコールが体を少し火照らしたが夜風がそれをさましてくれる。
いや、幾ばくの怒りか。焦りか。
それともこれは。
自分でも認めたくないような感情が噴きだしそうだ。


波の音と混じって、少し離れた街からする声。
耳を澄ましているのを自分で認めたくなくて、そのまま寝ころんだ。
天には屑星が心細く。
今にも泣き出しそうな紫色の空があるばかり。
目を閉じた。






誰かの足音を聞いた気がした。
閉じていた瞼を開くとさっきまでは薄明るかった空ももう闇に変わっている。
微かに瞬いていた星すら雲に覆われて、生暖かな湿った風が頬を叩く。

突如、お土産、と差し出された。
跫音の持ち主はこいつ等らしい。

その手の持ち主はウソップ。
礼を言って、包みの中の物を頬張りながら、
奴の口から漏れた「遅いな」と言う声は聞き流した。




雨。




日没から暫くして降り出した雨が、甲板を叩く。
まだ帰ってこない。
先刻まで外で待っていた。降り出した雨が俺を室内へと追いやる。
出てくるなと、そういわれたようで腹が立つ。
そんな訳がないのに。

キッチンに掛けてある時計の秒針が規則正しく進むたび、理性は削られていくようだ。
時刻はもう11時過ぎ。これで何本目になるだろう、数えるのも鬱陶しい。
新しく栓を開ける。


ドアの外に目を遣ると、もう雨音はしていない。
グラスを持ったまま、雨の匂い立ち込める外へ顔を出す。


聞き慣れた戯れる声。
慣れ親しんだ跫音。


仲良くご帰還。か。

ナミにしなだれるように腕を回しながら、頻りにキスを迫っているようにも見える。
それをナミはやんわりと払いのけながら、もうしっかりしてよと笑っている。



俺の存在にいち早く気が付いたのはコックの方だった。
銜え煙草の侭こちらに嗤いかける。
意味深な、ホントは意味なんてない酔っぱらいの戯に過ぎなかろうが。



其の時。
何を考えてたかなんて、誰も知らないだろう。
俺だって、解っちゃいなかった。

ただ、一瞬にして酔いが醒め、別の何物かが沸き上がった。
それだけ。







「遅くなってごめんね。」




雨宿りついでに入ったバーで話し込んじゃって、そう話すナミを遠巻きに見ていた。
そこで酔いつぶれたサンジは得々と口説きに掛かったらしい。
ところがナミのペースで相伴につきあった。
コックは言うほど強くない。と言うか人並みだろう。
只この女が笊なんだ。
つきあえるのはゾロくらいだよなぁと、船長はこっちを見て無邪気に一笑。
それにも生返事。

ルフィは軽々とサンジを抱えた。
一向に目を覚ます様子のないコックは、だらんと手を伸ばしたまま退場した。

舞台に残されたのは二人。



「サンジ君、絶対どこか連れ込む気だったわよ、きっと。」
まんざらでもないような顔。それにも生返事。

お風呂入ろーっと、そういうと先刻までサンジが抱えてた戦利品を
自ら抱えてドアの向こうから手を振る。





解ってる。
これがなんて言うかなんてこと。
それに気が付かない振りは、もう出来なかった。











「なによ、まだ何か用?」
明日にしてよ、そう素っ気ない。
ボトルを持ったまま、階段を下りる。
「ずいぶんと、早いお帰りで。」
慇懃無礼な態度。

態と。

もっと早く帰るつもりだったと、心にもない嘘。
ゆっくりと近づく。
影がナミにまで伸びて、捉えた。

「こんな、痕つけてか。」

ちょうど鎖骨の上辺り、微かに鬱血した痕。
人差し指で、強く押す。


「何言ってんのよ、これあんたがつけたんじゃない。」

噛みつかれる。
動揺もしない。
むしろその罵声が追い風。



「酔ってんの。」



気配を察したのか、後ずさる。


「酔ってネェよ」

先刻まで少し頬を赤らめていたのに。
一瞬にして青く変わる。


「何時から呑んでたの。」
「夕方。」
手に持ったままのボトルを見ながら溜め息を付く。
「もう、いい加減にしてよ。それ何本目?
 サンジ君怒って・・・・・・・・・・・・・・」

サンジ。サンジ。サンジ。


この声であいつの名を呼ばれると虫酸が走る。




乾く舌を嘗める。
ゆっくりと足を踏み出す。
怖じ気づく姿はなかなか女らしい。
いい。
壁際に追いつめる。
視線が逃げる。
両腕の檻の中。
緩慢な動きでその顔を封鎖。


「あいつの方が、いいって。」

「何話すり替えてんのよ。」



もっと詰れ。




「しよう。」



突然の誘いに即答。



「やだ。」

そんなことくらいでは傷つくはずもない。

「そういう気分じゃない。」





語尾を言い終わらないうちに、口封じ。
押しつけた身体を躍起になって引き剥がそうとするけれど、そんなもの可愛いモンだ。
両手首を捕まえて、後ろに捻ると声を上げる。
逃げられるのはもう真っ平だ。




跫音がする度、隣が動くたび、目を覚ます。
短い夢を立て続けに見て、傍にいると安眠できない。
ショートフィルムのような悪夢。
しかも忌々しく必ずお前が出てくる。

何が気に入らないのよ。


そう、もっと詰ってくれ。
自分でも解っちゃいないんだ。
ただただ安心したいだけ。


縛って。

雁字搦めにして。

逃げないように。

閉じこめて。

常に、鍵を掛けて。







短い悲鳴を上げて、ベットに突っ伏す。
床に膝立たせて、上半身はベットの上。
後ろ手に縛った自由の利かない手を計算。
その背中に覆い被さる。
キャミソールをたくし上げながら、まだ湯気の立ち上る背中に舌を這わせる。
微かに汗ばんだ肌。


見せたのか。


何言って


肯定。
或いは否定。
手はそのままナミの身体とシーツの隙間を縫って押しつぶされた乳房へ。

肩胛骨の下辺り。皮膚の薄いところ。
選んで、強く吸う。
背中が跳ねて、その隙に。
ナミの小さなボタンを探す。
探さなくっても知ってる。




額を擦りつけ、こちらを懇願するように見上げているけど、構わない。



やめてと拒否反応をするけれど、それもご愛敬だろ。
軽く開いた脚の隙間に手を入れる。
下着の上から辿りながら、皮膚との上に出来た数ミリの狭間から滑り込む俺の指。

「く・・・・・・・・あっ」


女は感じないと、濡れないのだと知った。
そこは昨日はたったこれだけでぬめっていた。
何の抵抗もなく俺を飲み込んで、前後不覚にまでさせたのに。


まるで、俺を今や完全に拒絶されてるようで。



痛む。
痛い。
こうまでしないとどうにもならないこの感情が苦痛。


指先すら入らぬそこに無理矢理ねじ込んだ。


サンダルの爪先が床を叩く音。
快楽を一切含まぬナミの叫び声。
それらに耳を裂かれながら、
それでもこのやり場のない孤独が一時でも埋められるなら。


ナミの半身が跳ねて、
リズミカルに振動するベットのスプリングと俺の鼓動が呼応している。








いっそ深く傷ついて。



指を抜き、ナミの微かな体液がまとわりついたそれを嘗めた。
片手で下着を刷り降ろし、放った。
ジッパーを降ろし、痛いくらい立ち上がってるそれを取り出す。
指を嘗め、唾液で濡らす。それをナミの口に擦り付けたと同時に
指よりもっと太く、脈打ったそれを捻子込む。



「無理。」


涙声。
懇願。
憐憫。
愛憎。


そう、
大事だからとか、
だから傷つけたくないなんて、
そんな屁理屈にはもう飽き飽きなんだ。
いっそ深く傷ついて、お前の心の奥底にまで癒されぬ傷跡を残して。



痛いと泣いて。


こっちだって痛い。
潤滑油のないこんな。
皮膚の上に引き連れるような跡が残るような。
最奥まで打ち付けながら、泣き喚く女を心から愛おしく感じた。
この拷問の様な、最悪の行為の中で確信する。





詰ってくれ。
本当は俺のことを好きだったろ。
だから傷ついたのだと。



そう言って。





ナミの中が痙攣している。
引き千切られそうだ。


一双強く声を上げて、喉の奥が込み上げる吐き気に汚染されて。




「赦し・・・・・てぇ。」



声なのか、吐息なのか。
判別付かないその哀願。
何度も奥まで打ち込んだ後、収縮するその中がこれは快感ではないことを教えてくれる。
赦せるわけがない。
俺をこんな風にした罰だ。




終わったっていい。




ナミの脚の間から一筋血痕が流れる。



終わったっていいんだ。
これ以上欲しくなる物なんてもうきっと何もない。

どうかしてる。
ホントに欲しくて欲しくて、それでもとても大事で。
誰にも渡したくなくて。




終わったっていいんだ。



その名を呼んで。
一瞬背筋に寒気と、開放感。

微かに萎えたそれをナミの中から引きずり出す。
ナミの血で真っ赤に染まったそれを見たとき。
涙が出た。




思い切り傷つけたい。
その痛みでしか自分の重みを量れない。


どうかしてる。

持て余したこの気持ちを眠らせることなど最早。




目覚めれば夢より狂った。

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裏500hitで贈らせていただきました。
りょうさんに捧げます。
テーマは「ナミが好きなのに鬼畜ゾロ。」スキスキ、こういうの。
でも力不足でそんなに鬼畜になりませんでした。
ごめんなさい。

しかし鬼畜のまま終わってイヤーなきぶん。
最後はラブラブにすれば良かった。

こんな出来映えで申し訳ないです。
これ、リク消化したつもりアタシ!?
お、お受け取りいただけますか??
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