「違える人」
byとうこ様






お願い。
誰にも
話さないで。
どんな苦痛にも耐えてきたアタシだけど、
この痛みには我慢できない。

お願い。
見なかったことにして。
ひらく体より
見透かされることのほうがどんなにかみすぼらしい。

お願い。
聞かないで。
嬌声でも歓喜でもないの。
このあえぎは。



ただのうめき声なのよ。






沈んだ太陽が恋しい。
塗りたくられる闇は嫌い。


寝付けない夜が慣れっこになって
アタシは習慣付けられたようにキッチンへ向かった。
たった一口でいい。
安らかな夜を手に入れるため
濃いお酒を舐める。

決しておいしくはないその味。
苦いだけ。

そしてそこには
決まりごとのようにアイツがいる。

なんだか眠れない波長があうようで、
夜更けにキッチンに向かうたび顔をあわせなきゃならなかった。


いつか、もしかして、

どこかで漂っていた緊張。

それはどちらでもなく。


けれど、

今夜、


冷えてもいないグラスを持つ手を
そっと握ったのはアタシ。


細めた突き刺さる視線に
うすい笑みを返したのもアタシ。


ずれかけていた歯車は

この時、


決定的に砕けた。



それはもう、

見事に。





青すぎる闇の中、
窓辺から刺す淡い光。

照らされたその立ち尽くす影に言葉なんかいらない。

アタシの嘘につきあって。

アンタの瞳に宿るものを、思いやるほど余裕はないの。


我侭な子供だと、笑ってくれればいいのよ。


誘ったのはアタシ。

自分からベットに入った。


ゆらりと覆いかぶさる
厚い胸板と重み。

アタシの芯まで響く鼓動。

間近にせまった顔が
なだらかに触れ合って

唇をなぞる舌先のしめりに
焦がれる影を色濃く重ねる。

絡まるしたたりを飲み込んで
受け入れて

もっと欲しいと唇を寄せる。

頬に添えられる手のひらは
はじけるように熱い。

なのに寒さにざわめく肌。

つうと指でなぞると
気付いてはいないかもしれない、
壊れ物のように荒げた。



ああ、きっと




この人は知っている。




ぎこちないキスは
饒舌にものを語る。


触れた唇だけが
妙に生々しい。


薄ら寒い外気に
徐々にさらされていく肌。

剥がされていくたびに
ほどけていくのだと思い込む。

全部じゃなくていい。

跡をひきずるその部分だけを。

どうか。


もっとすべって

アタシの上を



伝わってくるアンタの熱を

塗りつけて



乱暴な仕草で

アタシの結び目を解いて


喉元に立てられた歯の甘い痛み。

奥底から昇ってくる鮮烈な刺激に、
まるで自分ではないような吐息を噛み殺した。


眩暈がする

これだけで


行き場のない両手が
短くて硬い髪をかき乱す。

ああ、こんなのなんだ

思っていたのとすこし違う

もっとふわふわして見えてたのに

生え際にうっすらと浮かぶ汗が
短い髪を束ねて手のひらを刺す。


でも、
こそばゆくて気持ちいい。


背中にまわした腕が
与えられる刺激に呼応して
汗ばみ始めたシャツを掴んだ。

心地よい体がアタシの上を行き来するにつれ
はだけられていくヒフ。

重ねられた場所は
まるで快楽の澱み。

それを感じるだけで
飛びそうになる思考。


ああ、そうなの


欲しかったのは

きっと、



これ



今はきっと


これでしかない



もう


あの陰鬱な夜に



戻りたくない



降りていく頭を抱きしめて
与えてくれる刺激に
彷徨っていた吐息を吐き出す。

敏感な先端をなぶられて
火花が散る。



して



もっと



言葉をため息になぞらえて。


「あ、」


押さえきれなかった衝動が
些細な動きで口をつく。


びくり、と
まるで震えたように
一際大きく打つ鼓動が
はりついた肌の向こう側から聞こえた。


そんなふうにしないで

お願い



ただ

埋めてくれるだけでいいの


刀を握ることを生業としているなんて
考えられないほどやわらかく動く指が

ほたほたとしめる部分をなぞった。


「あ!、・・あん・・」

無意識に紡がれる叫び。

アタシの中からでるものだけでまとわれるぬめった指。

意思に反するその場所は
まさぐる手を濡れしめすほど溢れる。


「てめぇ、なんでこんなに濡れてんだ。」


せめてその言葉を
片方の眉だけゆがめるいつもの強気な笑みで言ってくれたなら。


凍ったように透けるその顔に
返す言葉を今は持たない。


ただの


舌から落とされようとしているその単語は
言ってはいけない。


装うアタシを剥がさないで


その長い指で
アタシの口に蓋をして


アタシは身を起こし
きれいな曲線を描くその肩に
歯をたてる。

削れた夜光に照らされるつややかな肌を舐める。


して


もっと


答えは口をつかない。


抜いてはこじ入れられる指が
次第にそれを早めて

疼いて啼く体が発火しそうに火照る。

殺す息も我慢の限界。

体がそれを代弁するかのように
広い背中のあちこちに紅い爪跡を刻む。



「声、出せ。」


くぐもった低い響き。


タガが外れる瞬間。



「 ひ 」



体の真ん中から昇ってくる衝撃に

叫んだ。

ぼやけそうになる視界の中で
ただ目の前のアタシに執着する素振り。

つきとおす嘘がゆらぐ。


アンタじゃない名前を呼びそうで。


お願い

引き戻さないで


きっとアンタが思っているとおり

嬌声でも歓喜でもないの

この声は


足を持ち上げられる窮屈な姿勢ですら
よがりの要因となる体。

全部さらして

でも
覆われた真実だけ隠して

そっと寄せられる唇の刺激に
こわばった体全体が揺れる。

「ん、・・・ん・・・やっ・」

淫らな肢体をすべる瞳。
なにもかも
みせつけて
つきつめて。



「入れるぞ」


耳の奥にやっとのことで届く声。


それはもう
誰だかわからない。



「早く・・・・、して  ・・」



それはもう、
誰に言っているのかわからない。


二人の混ざったぬめりの真ん中に
あてがわれる体。

のめり込む。

飲み込む。


低い屈んだ力がアタシの中に入り込む。


昇りつめるのは
アタシなんか存在していないただの叫び。

きつい細い道をわけ入り
進むその体。

アタシの上で、まるで苦痛に耐えるように
歯を食いしばる。

頬にぱたぱたと落ちる汗は

まるで。


「ああ!ああん、・・・あっ・・」

「はぁ、はぁ・・・」

入れられただけでいきそう。

こんなにも。


もっと


もっと深く


「もっと・・・・、・・・入って・・・」

歪んだアタシの亀裂を
かりそめでもいい


アンタで埋めて



何も考えないで



「んん・・・、はぁっ・・・・あああ!・・」

高まっていく体はどこか遠くを彷徨っているよう。
確かめるように
抱きしめようと腕を伸ばした。

繋がっている瞬間ですら
その距離は縮まらない。

体はひっきりなしに打ち付けられているのに。

「はぁ・・・・」

「あああん、・・あん・・・、あ!」

まだいきたくない

まだ足りない

まだ埋まっていない


まだ一つも



「ああああ!!!!」

頭と体が同じものでないことを
確信さえするこの時。

強烈な白が
アタシの思考を閉ざす。

きつく閉じられた目の前

こわばって収縮する体の前には

与えてくれた男がいるのに。


アタシはどこまでも我侭に
自分のことだけに正直に



脱力する。




繋がっていた部分に
ぬるい液体が注がれる。






空気に散った水の粒子が
ぺたりと肌にへばりつく。

甘くもなんともない
ただしめった
黙。


体を寄せ合うことすらせず


私はベットから出た。



とりかえなきゃ寝られないわ


シーツをしまった棚へと向かう。

後ろでに感じるのは
伸ばそうとして
伸ばされない腕。

だからきっと
アタシはアンタを選んだ。

求めるだけ求めて
元の関係に戻ろうとする
アタシの醜いエゴ。

ベットを先に出たのはそれでしかない。

振り返りはしない。

現にアタシの空洞は
アンタの濃い色に染まっている。


でもそれは仮初。


光刺す陽の光をあびれば

うすく消え去る淡い色に戻る。


背中の紅い跡さえも

いずれは


ただのひきつれた模様に。






end

とうこさんのゾロナミ初エッチでございますvv
流石、鳥肌立っちゃいました。これアタシラストが凄く好きなんですけど・・・・
あぁでもなんかナミ嬢の寂しそうなカンジが凄く好きぃ!!!!
とうこさんちのゾロ編もステキでしたけど、ナミ編もステキ
ナミ誕(も併合・・・・)らしくっていいですね。
ところで撃沈されたゾロニコ、読みたいわあちしvvvvv
何はともあれどうもありがとうございました。
ゾロニコ、待ってるvvvvv

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