Do You Love Me?
白玉様
目を醒ますと、既に陽は高かった。
昨晩、遅くまで本を読み耽ってしまったのが原因だ。
ビビのパパに貰った年代ものの史料はどれも面白く、
私の知識欲を大いに満足させた。
「お早う、サンジくん」
甲板で煙草を吸っていたサンジくんに声を掛ける。
「ああ、ナミさん。オハヨウ」
「もう早くもないけどね。
ご免なさい、悪いんだけど何かある?」
意識が覚醒してくるに従って、空腹なことに気づいた。
「簡単なモノで良かったら、直ぐに用意しますよ。
ナミさんの分、ちゃんと取ってあったんだけど
ルフィの奴が喰っちまって」
なんとなくその光景が想像できて笑ってしまう。
「サラダとか軽いものがいいわ」
「了解。ア、ナミさん色変えたんだ」
「ええ、気分転換にね」
「新色だろ。似合ってて素敵だ。
美しさに磨きが掛かって眩暈がしそうだぜ」
臆面もなく、こちらが恥しくなる程の賛辞。
彼が云っているのは唇のこと。
ゾロなんか気づきもしない、些細な変化。
万一気づいても、素直に云って呉れはしないだろう。
サンジくんのそういうところがとても好きだと思う。
「有難う」
お洒落は自分の為にしているものだけど、褒めてもらうのは
やはり嬉しい。
アイツがそんな風に云って呉れたら。
嬉しい?それともキモチ悪い?
…想像すらできないわ。
キッチンにはルフィが居た。
「おい、ルフィ」
サンジの声にびくっとして振り返った頬は、不自然に膨らんでいる。
「☆×▼!!」
「お前ェなあ…ナミさんの分まで喰っといて、まだ足りねェのか」
慌てて飲み込んで、喉に詰まらせたのか、苦しそうに暴れている
ルフィに水を飲ませながら、呆れた様に云う。
「はーっ。死ぬかと思ったぜ。サンキュ、サンジ。助かった」
ひとの云うことなど聞いてないみたい。
「ったく。何時も勝手に喰うなって云ってんだろ。
テメエの所為でメニュウのプランが狂うんだよ」
そう云われても悪びれる様子もないのが彼らしい。
「そっか。悪ィ。まあ適当に頑張って呉れよな」
「アッタマくるぜ、このクソゴム。
蹴り喰らいたくなかったら、とっとと出てけ」
「まあ、そう云うなって」
ルフィはいつも通り機嫌良く笑いながらキッチンから消えた。
「さあ、これでナミさんと二人っきりvvv」
「何云ってんの。そんなことより、お腹が空いたわ」
事実から目を逸らそうとするのは、自分に疚しいところが在るから。
『クソコックに色目を使うな』
ゾロはそう云うけれど。
気になるんだから仕方が無い。
金糸の様な綺麗な髪、吸い込まれそうな青い瞳。
キライじゃないのよ。興味があるの。
あの器用そうな指が、どういう風に動くのか、とか
どんな表情をして女を抱くんだろう、とか。
サンジくんの背中を見ながら、そんなことを考えた。
私、昼間から欲情してる。
しかもサンジくん相手に。
躰の芯が熱く疼いて苦しいの。
「どうぞ」
テーブルの上に出されたのはクレソンとサニーレタス、
アスパラに湯通しした海老のサラダと、
程良く柔らかなバジル入りスクランブルエッグ。
ミントの香りが爽やかなオレンジミントアイスティ。
私が爛れた妄想をしている間に用意されたメニュウは
どれも美味しそうだった。
こんな女と解っても、貴方は好きで居て呉れる?
…このひとは私がゾロと、どんな痴態を演じているか、知らない。
「ねえ、サンジくん」
「何」
「キス、しよっか」
「エ?」
「だから、キス」
「駄目だよ、ナミさん」
そんなことしたら止まらなくなるよ。
囁いた声はすこし掠れ気味。
「だからキスだけ。
…して呉れないの?」
自分でもそれと解る程、嫌らしい媚びた響き。
最悪。
私の中でゾロは最初から男として存在した。
同い年でもサンジくんは少年だった。
現実はそうでなくても、私は彼を子供扱いしたかった。
…だって怖かったのよ。
自分に歯止めがきかなくなりそうで。
予感は的中した。碌でも無いことに。
「じゃあ、キスだけ」
軽く触れるだけのキスを何度も繰り返す。
サンジくんは髪をやさしく撫でながら、
小さな声で私の名を呼んだ。
それは思っていたよりもずっと効いた。
恋を語るには低い声で。
そんな歌のフレイズが、頭の中でリフレインしている。
そして同じ劇中で唄われるのは、
自分でも勝手がわからない、
確かそういう感じの曲。
「私、悪い女かしら?」
態と問うのは否定して欲しいから。
「多分、ね。俺をこんなに狂わせてる」
返ってきた答は予想外で上出来。
繰り返されるキス。
唇が焼ける様に熱い。
躰中の神経が、唇に集中しているみたい。
「ナミさん、好きだ…」
肩に触れた指先が震えてる。
「好き。凄ェ好き」
艶を帯びた切羽詰った声。
そんな風に耳元で囁かないで。
「好きなんだよ、ナミさん」
このまま私を抱いて。
思わず口走ってしまいそうになるから。
突然、サンジくんが私を突き放した。
「悪ィ、もう勘弁して。真剣ヤベェよ」
このひとは何故、強引に私を攫って呉れないんだろう。
…知ってるの?知っていて遠慮しているの?
ねェ、どうして?
私、何をしているんだろう。最低だ。
「片さなくていいから。俺がやるから。
ご免な、ひとりにして」
キッチンには私だけが残った。
謝らなくちゃいけないのは私の方。
私、いったいどうしたいんだろう。
私の名を呼ぶ、貴方の声が焼きついて離れない。
残された唇が熱くて堪らないの。
自分でも勝手がわからない。
誰か教えてよ、
ねェ。
−了−
困ったわ・・・・リクss差し上げる前にこげな好いモノ貰ってどうしよう・・・・・・
困った・・・・クレユキどうする????
白玉さん、あたしのなんかでお腹みたさなくってもイイじゃないですかぁ
サンジ君がサンジ君がが凄く凄く凄くステキだわ。19才の男心が痛々しくってこみあげますね。
切羽詰まった声はあの声で読んでいただきたい、流石声フェチを自認されることだけはありますね。
子供扱いしたい男とはじめっから男としてみてる男って言うところが
アタシにはない発想で開眼させられました。ははぁ、なるほど凄いわ。
貰った直後まず読んで、このページに移してからもう一回。それからupする前に至福の時を味わいました。
ちょっと悔しい。いやちょっとだけじゃなくってかなり悔しい。
このリベンジは「誰カノ愛シイヒト」で!!
どうもありがとうございました。愛を込めて