『 Bitterness 』
りょう様



 

    物怖じしない女は好きだよなぁ。
    警戒心は興味の裏返しって知ってっか?
    煽られれば煽られるほど燃える質だろ?
    出し惜しめばすべてかっ攫う。
    それがてめェのやり方だ。

    どんな感情だろうが関係ねェ。     
    後先考える頭がねェなら、近付くな。



    あの目が彼女を誘う。
    それは確信に近すぎる予感。




 
隠しておいたとっておきの赤を1本。
明日の仕込みの最中の彼に頼まれて
教えられた場所にあった木箱の中を探る。
目当ての物が手に触れた時
2種類聞こえていたはずの水音が
雨だけになっていることに気付いた。

振り返った先にあるのは立て掛けられた三振の刀。
浴室から出てきたその主。
挨拶代わりの微笑みに返ってきたのは
ワインボトルに一瞥。
それだけ。
カレは半裸に纏ったタオルを今度は頭に掛け
そのまま置かれていた服を身につけ始めた。

私など存在していないかのような空気。

意識してそうしているのか。
それとも無意識にそうしているのか。
少なくともカレが私がこの場にいないことを
望んでいるということだけは判った。



最後に腰に刀を差すまで見届けて、
漸く向けられた顔。
いつもの訝しげな目が私の視線の意味を問う。

「明かり、消してもいいかしら?」
「…あぁ。」

肩すかしだった?

ばつが悪そうにタオルを籠に投げ入れて
立ち去ろうと私の前を過ぎる隙のない横顔。
暗転する世界。
闇の中の私はカレにとって危険因子?
答え合わせは簡単。
聞けば済むこと。
口下手なカレに。



「私がこの船にいては迷惑かしら?」
「今更だろ。」
「それだけ?」
「ルフィの決めたことだ。文句はねェ。」
「そう…。人を信じられるって幸せなことね。」

恐らくはその指が扉に触れる直前。
止まることのなかったその足に
私の言葉が絡み付く。

「ここに居たきゃ、大人しくしてろ。」

その背中は火種を隠そうとはしていない。
何のコトかしら?とお決まりの台詞を囁いて、
歩み寄っていた足を止めた。


瞬間。
返される踵。
鍔鳴り。


争うつもりはないという笑みも
互いの朧気な輪郭くらいしか見えない闇の中では無意味。
夜目が効くのか制しようと伸ばした腕を掴まれて
その硬く強い力にカレを見た。

「遊びてェなら他当たれ。」

「大人しくしていなくてもいいのかしら?」

口答えは許してもらえないらしい。
そのまま腕を引かれて扉の脇に押し付けられて
私はボトルが転がる音が消えるのを待つ。
それは壁に叩き付けられた痛みとカレの体温が混じり合って
私の体に馴染むまでの時間。

「てめェは信用ならねェんだよ。」

簡単に手懐けられると思うなと
耳元で重く響くその声に、その不信。

私に触れる気などないくせに
他を当たれと言ったのに
本性を見せろとカレの膝が私の脚をこじ開ける。

「背、同じくらいなのね。」
「…何が言いたい。」
「あなた…彼のお下がりを抱きたいの?」
「それで、俺が引くと思うか?」

カレの体が私の胸を締め上げて
押し当てられた鼓動が耳を灼く。
苛立ちと共に燃え立つような熱。


不意に外を向く…意識。


不規則な雨音に混ざる規則的な音。
その気配に耳を澄ます。
階段を下りたそれが板1枚隔てた向こう側で止まって
同時に回り始めるノブ。
反射に等しい選択は
開き始めていた扉を咲かせた手で引き戻させた。



私を呼ぶ声。
扉を叩く音。
それと闘う私をカレが嘲笑う。

「開けさせろ。」
「あいつが逃げるとこ、見せてやるよ。」

誘惑者然とした口調。
脅えたフリでもしてほしいの?


お巫山戯は、ここまで。


「酔狂ね。そんなに私が怖い?」
他の色を混ぜられて、この船を汚されるのが怖い?

「安心なさい。疎外感ならちゃんと味わってるわ。」
そう。
それは毎日。
嫌と言うほど。

少し感傷的すぎたその言葉に
カレは置き手紙を残すようにシャツの胸元を引き千切り
私を解放した。




倉庫に入り私たちを見咎めたその爪先が
ワインボトルを掠める。
それはちょうど彼らの間で動きを止めた。

対峙は数秒。

カレはもう用はないとでも言いだけな緩慢な動作で
自分の前に転がる境界線を拾い、越える。


「腑抜けが。」


すれ違い様。
肩越しに投げられた釦と言葉に
彼の前髪が微かに震えた。




悪い予感がしたんだと不条理を恨む彼の呟き。
先回りしてまで味わった屈辱感を
まだぶつけ倦ねている。
その激情をどこに隠せばいいのか思案するような眼差し。
裂かれた布を掻き合わせていた手を離して
立ちすくむ彼の胸に体を預けると
堰を切ったように掴まれる両の腕。
掬い上げるように貪られる口付けはいつもより苦い。
それは煙草の所為ばかりではなくて。

自問を繰り返す先に過ぎるのは
誰の言葉?
誰の面影?

「クソ野郎のこと考えてんの?」
腕の中の黙認は、何かの誓いにも似た緊張感。

もう何も言わなくていいように
何か言ってちょうだい。

「俺を見てよ。」
そう歪む唇に
それなら自由にしないでと、
解いたネクタイと共に私は両手首を差し出した。

end


念願のニコサンゾロvvvv戴きましたvvv
ゾロが酷い人なカンジで
しかも横暴で獣系?イヤンvv
しかもサンジがは私の大っっっっっ好きなパターンのサンジだしvv
なんか私異常に興奮しているのですがどうしましょう
相変わらず上手いですねー
いやいや眼福
奪えて嬉しいですvvv
ありがとうございましたvvvvv

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