written by れーな・K様
暝い海の彼方











黒と赤。
闇と、夥しい血の、海。
当の昔に鬼籍に入った親友に二千と一敗したその後、
随分と無かった、敗北。

現実世界から意識は解き放たれたように、
血塗れの自分を見下ろす。

生と死の境界線上に揺う魂。
纏わりつく闇。
一条だけの光は麦藁帽子の向こうに透けて落ちる。
一振りの白鞘を掲げた誓詞は
雲の上まで届いただろうか。









その闇の向こうに。
遠い日の親友の姿でなく
明るい色の髪が覗く。



女は逃げた。
そう、聞いた。
放っておけ、と云った。
本心かそうでないかそれさえも判別がつかない。
麦藁の言葉だから、追うのか。
でなければ。
追ってどうする。

手を組んだだけと女は云った。
海賊相手の泥棒だ、と。
信頼など端から無かった。



それでも。



あの女の笑い声が耳に甦る。
落日の色をした髪と、暗褐色の眼と。


触れたことも無いはずの肌の感触を知っているのは
只の既視感に過ぎない。
抱いてもいない女に何故、こうも捕われているのか。






捕われている?






馬鹿な話だ。



何時でも女は邪魔なものに過ぎなかった。
処理の相手なら幾らでもいた。
感情を伴わなければ、女は只の道具でしかない。
そんな次元で抱いた女など皆無だ。


何故、あの女を。


欲望の対象として見た記憶も無い、あの女を。
いや、そう思い込もうとしているだけか。


追う理由を麦藁の言葉だけにして
無理矢理に自己完結させている。



何故こんな時に気づくのか。
見たくも無い深層心理。
胸に刻まれた敗北の証から、
未だ流れ続ける鮮血と供に。
一度思い知ってしまえば。
留められない。








黒と赤。
闇と、夥しい血の、海。






あの女が消えた海には、他に色は無い。


この冥府の海。
その彼方に。




女を見つけ出すまで。

end


アァれーなさん!!ありがとうございます。ステキです。
相変わらず美しい心理描写と心象風景。感服。
テーマは「ナミに惚れてるのを『初めて』自分で気が付くゾロ」
成る程。でもアタシこの辺のゾロかなり好きなんですぅ。
赤と黒の海ですか、意味深ですね。
でもこの後が気になりますね(にっこり)
冒頭と初めがリンクしてるのがかっこいいvv
寄稿ありがとうございました。
手放したりしませんので(えへへへへvvv)


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