written by 百地様
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切欠 理由、些細な出来事
どれを取っても説明不足
今更と言って

ネェ、こんな俺を笑って
どうにもならないのに、それでも
ほしがっちゃダメかな?

越えてはいけない線を踏んでる
警告しないの?

答えてよ
笑ってないで、
ねぇ、答えてよ
気付くきっかけは、何時も、些細なことで。


「サンジ君。」


不意に、名前を呼ばれて驚いた。
驚いた。

驚いた。

此処は、彼女の部屋。
俺は、コーヒーと、斜めに切った食パンと、サラダの乗ったトレイを持って
少し口をあけた、間抜けな顔で立っている。



今日の朝、何時もの様に俺は、朝早く起き出し船室を出た。
甲板の手摺りにもたれ、目覚めの一服を満喫する。
空きっ腹に染み渡る煙は、如何にも上手くて止められそうに無い。
止める気も無いが。
其処へ、何時もより早く、彼女が現れた。

「お早う。ナミさん。」

まだ少し、眠そうに目を擦る彼女に、極上の笑顔で挨拶をする。
・・・可笑しな話だが。
彼女が現れたことで、その場の空気が華やぎ、
その空気でタバコを吸っている、俺の中は
何か、甘く、心地の良い物で満たされ、
浄化されてゆく様で、俺は、目一杯空気を吸った。
実際は、肺が汚れてゆくだけなのだろうが。

「ん、オハヨウ、サンジ君。」

挨拶を返してくれた声に、張りが無い。
目の下に出来た、薄い隈に気付く。

「ナミさん、顔が少し疲れてるみたいですけど、
 昨日は晩かったんじゃないですか?
 今日、こんなに早起きして、大丈夫ですか?」

そう云えば、昨夜は晩くまで部屋の明かりが灯っていた。

「平気よ。昨日の内に片付けようと思っていた事がまだ終ってないの・・・」

小さく、あくびをしながら彼女が答えた。

「そうですか・・ご苦労様です。
 あ、コーヒーと朝食、部屋にお持ちしましょうか?」

何故か、申し訳の無い気持ちになって、
すでに船室に帰る体制に入っている彼女に言う。

「そうしてくれる?」

振り向かず、軽く片手を上げて彼女は答えた。

彼女の姿が見えなくなって直に、俺はキッチンへと向かった。
眠気覚ましになれば、と、濃い目にコーヒーを淹れ、
簡単だけど、彼女の好きな野菜と、
手作りのドレッシングを添えたサラダを盛りつけて、
焦げ付かない様、注意深く食パンを焼き、バターをのせた。
これ等をトレイにのせ、彼女の部屋に持ってゆき、
疲れた顔をしながらも、「おいしい」と、
笑って、食べてくれたら。どんなに幸せだろう。
自分のことを、僅かな間だけでも想ってくれたら。
どんなに幸せだろう。

そんなことを思いながら、作り、部屋を出て、
彼女の部屋へと続く、階段を下りた。


「あー・・・」

平気、と言っていたが余程疲れていた様。
傍にあった机に、トレイを置こうとした。時。

「サンジ君。」

不意に、名前を呼ばれて驚いた。
驚いた。

驚いた。


だって  彼女は  眠っているのだもの。


自分のことを想ってほしい、と
さっきまでは願っていたのに。

今、は。

この部屋から、逃げ出したいばかり。


ねぇ。俺の夢を、見てくれているの。
ねぇ。その夢には、あいつも、出て来るの。


まるで、水中に居る様。
上手く、呼吸が出来なくなる。

ああ、今日は少し肌寒い日だから。
布団を掛けてあげなくては。
うかつに、近づいて。
もし、彼女が。あいつの、名前なんて、呼んだら。


ねぇ、ナミさん。

俺達、ルフィと出会って、君と仲間になって、今、こんなに近くにいるよ。

君に触れることも、
抱きしめることだって出来る。

なのに、どうして、どうして、俺の物には、ならないのだろう。

本当は、何処か、解っていたこと。
考えたくない。 止まらない。

何時だって、君を幸せにしたいと思っている。
でも、君の幸せを願っているわけではないんだ。
他の誰でもない、俺が。

君を、幸せにしたい。 と

俺の、幸せを願っている。

何よりも、君が好きだと言いながら。
誰よりも、自分の幸せを願っている。
君への賛辞の言葉が尽きることが無いのは。
俺が、君への気持ちと自分の幸せを、すり替えてしまう様なズルイ奴だから。
だから。 俺の物には、ならない。


気付くと、あいつが階段を降りてくる音が聞こえた。

「あ?何やって・・」

あいつの言葉を遮って。

「うるせえ」

部屋を出た。

「うるせえ」

繰り返し、
小さく、呟いた。

end


あたくし初めて人にss戴きました。百地さんどうもありがとうございます。
アタシ「サンジが切なさ担当のサナゾ」大好きなんです。
しかも勝手にタイトルつけてごめんなさいね。
ホントはいつもアタシのssにつける始まりの詩みたいなヤツつけようかとも思ったんですが、
人の物を勝手にいじるようなことは出来ましぇん、と思い・・・
最後の「うるせぇ」ってところが微妙にツボはいってます。

はい読み返して、読み返して・・・
ロマンチスト男が好きなあたくしにこれを頂けるなんて嬉しい。
どうもありがとうございました。

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