unfair
ここではないどこかへつれてって
ここではないどこか
本当はそんなものどこにもないって事 知ってるのよ
もしもあるならつれてって
ここではないどこか
ここではない、
あなたがいないどこかへ


波は静か。頼りなく星が瞬いている。
新月の夜。明日には細い月が見えるだろう。
もう真夜中に近い。
明日の食事の仕込みをして、風呂から上がったらにこんな時間になった。
まぁ、いつものこと。
別段変わったことでもない。
しかし、目が冴えてしまっていてすぐには眠れそうにはなかった。
眠れないときはアルコール。
キッチンの棚から一本とった。それからグラスも。
歩いて、船の舳先まで。

誰もいない船の上。
一番贅沢な時間だ。

真っ暗な海はどこまでも続いて、空との境界が判らない。
こんな心細い灯りの下じゃぁしょうがないと燐寸を擦った。
炎を吸い込んで煙を吐く。
十二時過ぎると煙草がどんどん不味くなるのは何故なんだろう。
喉が痛い。

グラスに注いだ安酒。一口含んで流し込んだ。
旨いか不味いかなんてこの際言いっこなしだ。
両舷にあたる波の音。
それを聴きながら、煙草を吸う。
ぼんやりと一口、二口。
そうしている内に殆ど灰になり惜しむまもなく海へ放った。
不意に気配を感じた。

「”おいしそうね、一本頂戴。”」

この間と同じ台詞。誰かなんて問わなくっても判った。
「残念、もうこれが最後。」
ジャケットの内ポケットから最後の一本を出し火をつけた。
「吸う?それとも新しく巻こうか?」
その問いかけには首を振っただけだった。

「これで、好い。」

火のついたまま煙草を差し出した。
受け取るのかと思ったら、そのまま手に口唇を止せ、一口呑んだ。
指に当たる口唇の感触。


身震い。
鼻先にある髪の毛の匂い。
口唇が触れた指先。
湿った吸い口。
平静を装う、まさにそんな感じ。
おそらく装えてはいなかった。

「ナミさんと間接キスできるなんて嬉しいなぁ。」

たった一本の煙草の共有。
こないだより進歩。
出し抜けに、彼女が言った。

「キス、しよっか。」

脈絡のないその発言に思わず空耳かと思った。
思わず、呆然とその瞳を見返した。
けれど暗闇が邪魔して、その息づかいくらいしか感じられなかった。

「何故?」

そう聞き返せば良かったのかも知れない。
でも、聞いたらいけない気がした。
どうしてって、それは本能が発する信号のような。

「あんまり挑発しない方がいいよ。今の、忘れるから。」

向き合う位置がなぜだか酷く恐ろしくて、海の方を見た。
きっと何かあったんだなと、計算している自分が酷く嫌らしく思えた。
それと同時。
火がついた。
闇夜、足元だけを照らす、わずかな炎。

「したくない?」

俺の懐にするりと潜り込んで、こちらを見上げている。
腕を掴むか弱い掌。
胸に当たる柔らかなふくらみ。
それから微かに混じった香水の薫りに煽られた。

「ナミさん。俺も男だからさ。」
なんだか腰が引けてきた。何故ってそれは・・・・。
「あたしは女よ。だから、言ってるの。」
あの男の代わりなら御免だと、常々おもっていたはずなのに。
ねぇ、それ以上挑発しないで。
「キスだけじゃ、済まないよ。」
脅しのつもりだった。もちろん、嘘でもなかった。
もう、理性とは別のところが思考をすっ飛ばして行動に出ていた。

きっとあの男と何かあったに違いない。俺は当て馬。きっとそう。
「キスした後で、俺はもっと酷い事するよ。」
こういえば怖じ気づくだろう。だってそうだろ、好きでもない男とだなんて。

「いいよ。」

まだ長かった煙草を海へと放った。
噛みつきたい位の衝動を何とか抑えて口唇を合わせた。
焦がれてやまなかったものが手に入った悦び。
それ以上に惨めさ。
口唇が苦いのは煙草を吸っていた所為だ。
そうとでも思わなければ、こんな事正気じゃ出来ない。

口唇は柔らかく、それを感じてる内に気が触れそうになった。
開ききらないそこを無理矢理にはこじ開けず、自分から開け渡すのを待った。
薄く開きかけたその狭間から舌を覗かせる。
絡ませた先がじんと痺れた。
欲望が血液を走らせる。
波音はもう何処かへ掻き消え、自分の心臓の音ばかりが耳についた。
さっきまで一息で吹き消えそうだった種火。

 今は囂々と言ううねりをあげて燃え広がる。

微かに目を開けると、そこには苦しそうな顔。

見なければ良かった。

後悔は嫉妬心を増幅させて、加虐心を呼び起こす。

「続きは、部屋でしようよ。」

ねぇ、言って。
嫌だって。
まだ止められるから。
ねぇ、言って。
ちゃんと言って。
オレに判るように、そう言って。
そんな顔で肯定しないで。

「ここ、痛そう。」
パンツのジッパーの上をそっと撫でられた。

挑発、不安、開放感。
もう、どうにでもなってしまえ。

扉が閉じ、鍵の閉まる音。その音で理性の掛け金が蝶番もろとも吹き飛んだ。
噛みつくように口唇を奪って、無理矢理に口唇をこじ開けた。
さっきまでの自制心なんてものは今は空しく心の隅に引っかかってるだけ。
掌で脇腹を擦りあげるようにしてキャミソールを脱がせた。
口唇だけは離さないようにしてスカートのベルトをもどかしく引き抜く。
背中に手を回して下着のホックを外して床に放った。
深く舌を差し入れて、髪の毛をつかんで顎を仰け反らせた。
前後感覚は麻痺。
名前さえ呼べなかった。


 顔を見たくなかった。
あの寂しそうな顔の残像がまだ辛うじて心をドライにさせている。

”誘ってきたのは彼女。”

言い訳を用意してまで、するなんて初めてだ。

細いウエストからずっと下へ手を這わせた。
ナミの身体が後ずさりする。
逃がすわけには行かない。
左手をその肩に、右手を膝裏に。
一気に抱き上げて、足元に乾いた音を立てて落ちたスカートを跨ぎ、
ベットに諸共落ちた。
その身体を跨いで膝立ちになって、
ネクタイをゆるめて一気に引き抜く。
もう、泣いたって、やめてと言ったって後戻りは出来そうにはない。
だって、もう、ここまできてしまったし。
皮を剥いでしまったし、ぐつぐつと血は沸いてるし。

身体の奥から深い息を吐いた。

目の前に横たわるもの。
焦がれてやまなかったものは、もう自分の腹の下だ。
虚ろうランプの光。
その中で見たもの。
ガラス玉のような瞳が酷く綺麗だった。
何にも見て無くて、
オレなんかどうでもよくって、

”早く”

そう焦らす言葉が酷く不似合い。

カフスを外した。
釦を外す時間が待てないのか、それとも。
上体を少し起こし、シャツの釦を器用な手で外していく。

「あいつにもしてやったの?」

いいだろう、これくらい、いいだろう。
何故って、オレは代用に過ぎない。
提供される哀れな献体。
笑っただけで、答えはなかった。
そう、答える義務はないし、オレに知る権利はない。
そう言うモンだ。
本当は知りたいなんて思っちゃいない。
知ってどうするんだ。

本当は知ってる。
壁の向こう側で繰り返されてたあの声。
惨めな夜に体の芯を火照らせながら。
自分を慰めた後の虚しさ。

シャツを脱がされ、意外なほどの肌寒さに身震いした。
それは雄の本能がそうさせたのかも知れなかったが、
それには気づかない振りをして、その肌に噛みつくことだけに専念した。
伸ばされた腕が背に廻り、そこから這い上がって髪の毛を梳いた。

プライドなんて もう無い。
そんなものは何の枷にもならない。

 残酷な人。

いつも俺は薄い壁一枚へ立てた向こう側。
あの男に啼かされる声を聞きながらベルトを緩める夜。
惨めな夜。
棄ててやる。
勿体ぶった男のプライドなんかはもう何の役にも立たないことくらい知っている。

じっと目を見た。
微かに口唇が動いたが、その言葉は聞き取れなくて、
きっとあの男の名だと思って塞いだ。
髪を撫でる手を剥がして指を絡めた。

”おれにしときなよ。”

言えるわけがない。
だって、こんな卑怯な手を使って君を陥れようとしてるんだ。
軽蔑するだろう。
代用品でも好いと思ったのは打算があったから。
君はこういう男は嫌いだろ。
だからあの男に惚れてるんだろ。

言ってくれよ。
嫌いだって。
そしたら、そうすれば、どんな酷いことだって出来るのに。

首筋が酷く綺麗。
オレンジ色の髪の毛が、放射線状にシーツの海にたゆたって。

肩に口唇を押し当て、音を立てて肌を吸った。
身を捩って、逃げようとしてるけれど、もう逃がす気なんて無かった。

演技だろ。
わかってるんだ。

舌先で、色づいた乳房の先を一嘗め。
艶めかしく漏れた息。
声を聞かせてやればいいのに。
オレがいつもどんな思いで壁一枚隔てたそこにいると思ってるんだ。
壁に背をつけ、自分で自分を慰めながら。
思い知れ。
思い知れよ。
これが報いだ。


片手で、もう一方を捏ね、口唇でもう一方。
空いた手はポケットからゴムを探し出す。

 占領されていた身体。
 永遠不可侵だとでも思っていたのか。
 そりゃお気の毒に。
 建前だろ、それは。

探し当てたそれをくわえたまま、女の閉じられてるそこをこじ開けた。
脚を身体で割って、左手は片膝を広げた。

 生々しい現実。
 それが血を流している。

短く声を上げた。それに煽られるように指でそこを押し広げた。
腐りかけの果実。
持った傍から崩れて、形を無くしていくようにそこは酷く柔らかい。

怖いくらいリアル。

指で掬ってやるようにすると背中が跳ねた。
肌寒さはもう何処かに行ってしまって、今は只、虜の身。
もはや、どうでもいい。
明日のこと。
罪悪感。
すべて屠った。
そんなこと、後から幾らでも理由なんて付けてやる。

ズボンのベルトを外し、ジッパーを降ろした。
ナミの中に指を突っ込みながら、同時に喰い千切った袋の残骸を床に吐く。

指を引き抜いて、その露が滴るところにそれを宛う。
呼吸、悲鳴、嗚咽、歓喜、それとも本当に?
どれも当てはまって、どれにも属さない、背徳心から来る興奮。

どうしたらこの異物が熔け合えるのか教えて欲しいくらいだった。
沈む二つの身体。
肌が粟立つ。
こんなに抱き合っているのに背中だけが凍えている。

泣いたって、
やめてと言ったって、
もし他の男の名を呼んだってもうやめてやるものか。
そう思っていたのに気丈にも俺の名さえ呼んではくれなかった。

燃えるような口唇。
奪った熱か、それともこの身を焦がす炎が伝えるもの。

そんなに暑くもない日なのに、頭の中が煮えていて、
息が上がって。
けれど二つの体をつないだそれを何度も擦り合わせても、
欲求不満は解消されても充足だけが得られない。
こんなことしかできない自分が惨めで、本当はやりたくなかったんだと嘘をつくこともできなくて。
感情が体を後押しして、彼女の中に出した後も、いっこうに鎮まらない。
込み上げるこの欲情。

いつもは大盤振る舞いな、口説き文句の一つも言えず。

そんな顔でキスをせがまないで。
そんな顔で俺を見ないで。

ねぇ、俺は馬鹿だから、信じてしまう。
ねぇ、信じたら、困るだろ。

まさか俺のことを好きなんじゃないかって、
頭の悪い俺は、勘違いしちまうんだ。

ねぇ。


dry?/to be continued


初めて書いたサンナミ18禁、というほどでもないか。
大人になってしまったクレユキに乾杯(ちーん)
っていうか、ゾロナミでサンナミ。
とうとうbrotherか。(使い方間違ってる?)
しかも、サンジ君自分が代用品だって事知ってますし、
それでも好いって思ってるあたりがはぐれ刑事純情派。
がっついてますけど、それは色々理由あってのことです。
これからナミさんもっとひどいことしたりされたりするんだろうなぁ。

しかしサンナミって凄いストレスを感じるわ。
サンナミサイトに行こう JR18切符で。
そこでLOVEを分けてもらわなきゃ。
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