beyond the way clouds go


If  these eyes did`nt know the light
These wouldn`t have been this thing I had see
If this body did`nt know you
These wouldn`t have been this memory I drug



真夜中。
深い深い夜に紛れて、何に溺れていくの?
優しい言葉が欲しいんじゃない。
ここにいるだけでいいと思えるようなわかりやすいものが欲しい。
たとえば、触れただけでわかる感情の昂ぶりだとか、
うとうととその傍らで眠れるような安らぎだの。
他愛いないもの。



まるでトレーニング後の日課のようだった。
シャワーを浴びてまっすぐ部屋に来る。
約束なんて無い。
そんなものしない。
只、私は待つだけ。足音が近づくたびに脈は踊った。
まっすぐ階段を下り、そのまま私のいる場所まで来る。
たぶん素面。



何の言葉も交わさずに、抱きすくめ、口唇を重ねて、それから。
服を剥ぎ、倒れ込む。
もう慣れっこの経緯。
あたしが選んだこの男はあんまり喋らない。
それが良くて選んだのもあるけど。

今日は違った。いつもと様子が少し。
躊躇いがちな目線。
それから、無粋な質問。

「なぁ、」
口唇が離れる間際にその鋭い目が私を見上げた。
「ん」
もう一度口唇を寄せて距離をゼロにする。
「何で、オレなんだ?」
声は曇って、いつもより掠れがち。
「何で、オレなんだ。」
もう一度聞かれた。
何のことか判らない振りで、口唇を塞ぎ続けた。
もう、喋らないでよ。
その口唇でふさいでよ。
 風穴。
海鳴りのような音とともに、暴風がこの体の中を吹き抜けていく。

あんただって我慢利かなくなってるんでしょう?
だから。
早くして。
「何のこと?」
面倒な話は後から幾らでも聞くから、早く。

「聞けよ。」
両手を片手で封じられた。
質問に答えない私に苛立っているのか、痛いくらい手首を捕まれて、動かせない。

「何で、オレなんだ。」

鋭いその視線が好き。

「何で、オレなんだよ。」

詰問するときのその怖いくらいの声が好き。

「ナミ」

あたしの名を呼ぶ、あんたの顔が好き。

「答えろ。」

空いた片手で顎を捕まれた。
そう、こんな風に乱暴に扱ってよ。
あたしはお姫様じゃないのよ。
何処かの阿婆擦れのように扱ってよ。

「好いじゃない。」

顎を掴んでいた手がゆるんだ。その隙にもう一度口唇を塞いだ。
いいじゃない。
あんたが好きなのよ、悪い?
でも、言わないわ。
そんなこといったら。

「別に、どうこうして欲しい訳じゃないし。」
そうよ、別にあんたに思って欲しいなんて思ってはないし。
「なんだよそれ。」
あたしが勝手に好きなだけよ、悪い?
「相性が良さそうだったから。」
欲しかったのよ、あんたが。
「それに、サンジ君じゃおもしろくないじゃない。」
心なんて欲しがるのは烏滸がましいから、これだけ。
「残りは子供だし、話にならないし。」
身体だけ。それだけで好いのよ。

「理由はそれだけか。」

相変わらず視線は怖いまま。
でもそんなものに怯むわけにはいかない。

「それが、理由か?」

肯定も否定もしなかった。
まともに目を見たらどんなことでも洗いざらい喋ってしまいそうだった。
彼はそれから一言も喋らなかった。
どちらともが口唇を塞がれていたから?
いいえ、ちがう。

堅い掌。あたしの脚を押し広げ皮膚の薄いところを選んで、甘く噛まれる。
たったそれだけなのに、もう、足の付け根が冷たい。
平生はそんな素振りをちっとも見せない。
そう、女とこんな事をしそうにない。
むしろ興味もない顔をしてる。

ほかの奴らは誰も見たことがないその顔。
微かに興奮したようなその息とか、
苦しそうに歪んだ顔とか、
熱っぽく潤んだ目とか。
あたしだけに見せてるこの痴態。

ねぇ、もっと乱れて見せてよ。
もっと啼いて見せてよ。


不気味なくらい無口になって、私を揺さぶり続け、
私はいつもの、その逆上せ上がる感情に目隠しされて、
その堅い体に縋り付くくらいしか術を持たなかった。
狭苦しい窮屈な姿勢。
こんなに近くにいて、何でこんなにも孤独なんだろう。
心が渇ききっていて、干上がりそうだ。

まだ、雨は降らない。

部屋の中は、漏れる息の音。それだけ。
澱んだ何の感情も持たない空気で満たされて。

平静を装えば装うほど、その動きは激しくなって、
喉元までその動きが込み上げてくる。
足を引き攣らせながら、今あたしを抱いてる男の顔をぬすみ見た。
苦しげで、それでも微かに頬を紅潮させながら、あたしを見ていた。
眉根を寄せて、口唇があたしを呼んでいた。
息が混じってすごく切ない。
窮屈な姿勢の儘その口唇を塞いで、
あたしの中にいるそれを締め上げた。
酷く苦しそうな顔をした一瞬後、白濁した粘膜が熔け出すような感触を味わった。


そうして抱き合っていれば、嫌なことも、何もかも忘れて眠れる。
たったそれだけのやすらぎ。
それだけで良いのに。
目が覚めたとき、隣には誰もいなかった。
ずっと一人で眠るのには慣れていたのに、どうしてこんなにも不安に駆られてしまうんだろう。
これが最後のお別れでもないのに。
早すぎる朝の匂いを嗅いで、もう一度部屋に戻った。


時間だけは潤沢にあるこの航海。
それは夜も同じ。
いつもこの時間になると決まって現れる男が来ない。
階上で足音がしていたから、シャワーを浴びてからここに来るのが日課。
でも今日は、扉が閉まる音がした後、音沙汰がない。
何が私を不安に駆り立てたのか、急いで階上に上がった。
甲板の上にいる一人の男を呼び止めた。
タオルを頭から被って、こっちに一瞥をくれる。
強い風が吹いていた。
「来ないの?」

これじゃまるで来て欲しいみたいじゃないのと、自分自身に言い訳した。
返事は素っ気ない物だった。

「いかねぇ。もうずっと。」
「どうして」
「お前が思ってるようには、オレじゃ動けないらしい。」
意味が分からなかった。
「なによそれ。」
「オレはそんなに飢えちゃいねぇし、困ってるわけでもない。」
何を言ってるの?
「誘ったのはお前だったな。」
嘲笑。
憐憫。
軽蔑。
ねぇ、お願いだから自己完結しないでよ。

「寂しいならサンジにして貰え。
 オレは、そう言う物を割り切ったり出来ねぇらしい。」

それだけ言うと男部屋に消えた。
私は何のことか判らなかった。
「なによ。」
判ってるのは、もう二度とあの人は私を抱いたりしないと言うことだけ。

愛されたいなんて願ってないじゃない。
そんな重荷になるようなこと、出来ないじゃない。
だから、あたしはこの気持ちに名前を付けたくなかったのよ。


今更。
自覚症状はあったのに、気づかない振りをしたただけ。
病は重く、よく効く薬を頂戴とおもうばかり。
誰でもいいから、誰でもいいから。
一人で眠るのには体は冷えて。


相変わらず湿った強い風が吹いてる。
空には頼りない三日月が夜空を照らして。
あの雲の漂うずっと上の方は、ここよりももっと強い風が吹いてるんだろう。


流れゆく、雲路の果てには何がある。
きっとどこまで行っても、暗い海が続いてるだけなんだろう。

unfair/to be continued

っていうか、どういう状態でなんて事話してるんですか、
っていうか、小さくならないんですかロロノアさん!!
っていうか、そこは心意気でカバーみたいな!
流石ですね、ロロノアさん!!
ところでこれ続きます。
連作です。やめときゃよかったとかおもったり。
もうなんか、どうしたらいいのか判りません。
特に後半部分・・・・。

雲路の果てと言う歌を聴いて作ったり作らなかったり。
coccoええ、ご多分に漏れず好きですよ、悪い?
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