noon
一日の内の一瞬。
でも、気にも留めていないモノ。

たかだか、時が刻んだ一瞬よ。
けれど刹那。

それに惹かれた。




正午。
一日の内の一瞬。気が抜けてしまうほど天気は上々。
只、風だけがない。
完全な凪。
船は進まず、暑い暑いとキャプテンは喚いてる。それを宥めつつにやっと笑ったウソップ。
仕様がネェな、と、自分も浮き浮き顔で倉庫に行く。
いったい何をする気なのかと見てたら、お守り役のサンジがボートを降ろした。



思わず笑って、サマーベットの背に勢いよく寝そべった。。



ルフィは寂しそうにボートの上で水遊びをしてる。
見てるこっちが可哀想になるくらい恨めしそうな顔。
その横で、からかいながらウソップとサンジが涼しそうに泳いでる。

ナミさんもおいでよと言われたけど、断った。
コックの魂胆は分かり易すぎていっそ清々しい。
けれど今日はダメな日。





今日はホントに暑い。
外で日課の新聞を読んでいたけど、冗談じゃないくらい。
蜜柑畑の木陰で居眠りする人の気が知れない。


「ネェ、ゾロ」

意外にもすぐに返事が還っていた。
眠れるはずがない。
勿論全くやる気のない気怠げなモノであったが。
じっとしてるだけで、流れる汗が気持ち悪い。

「のど、乾かない?」

だな。

こっちをちらりとも見ずに言う。勿論こっちからも見えない。



「じゃんけんしようよ。」

「なんで?」

「負けた方がキッチンに行って、二人分持ってくる。」

「なんで俺が?」



「あら、勝てる見込みのない勝負はハナッからしないつもり?」

”勝てる見込みのない”辺りに食いついてきた。
安い挑発に乗ってくるところが単純でイイ。
そこが好きでもあるんだけど。

わざわざ苛立つような口振りで言ったのだ。
食い付いて貰わないことには困る。


「わかった。」


じゃーんけーん








「何出したゾロ?」


サマーベットに寝たまま聞いた。


「グー」


「勝った。あたしはパー。」


あぁ、くそ、大仰に舌打ち。飛び起きる音がした。
あたしの出した手は、ずっとピースサインの儘。



「ストローさしてよ。」



 わかったよ。



渋々と言った面もちで、階段を下りる。



「氷も入れてね。」



 手前ぇでやりやがれ。



いかさまは十八番。少しくらい疑ってくれる人の方が嵌ったときの悦びはひとしお。
でも気が付かないなんてどういうこと?
そんなことじゃ、最強の剣士なんて笑わせてくれるわ。








手盆で、おらよとテーブルに載せられたのは空のグラス。
あれ?と思って、ヤツの手元を見ると汗をかいたディキャンター
妙に赤みがかったオレンジ色。



「お注ぎいたしましょうか?」


慇懃無礼にサンジ君の真似を態とした。
専属ボーイがいないから、替わりだってわかったんだろう。

「んーお願い。」

サマーベットから背を離し、ゾロの方にグラスをし向けた。
ゆっくりと注がれる薄朱の液体の流れを見ていた。
緩やかに流線型を描きながら堕ちてくる。



其の時一瞬だけ見えたゾロの左手。
何か、持ってる??



私のキャミソールの背中をちょっと開いて何か、入れ?



「きゃー。」

思わず悲鳴。


「いかさますっからだ。」


左手を大きく挙げて勝利宣言。
報復のシナリオ?
ディキャンターをあたしの悲鳴から避難させ自分のタンブラーに注いで一口飲んだ。



氷。



「もう!!とってよ!!」

「俺が取っていいのかぁー??別のモンも取っちまうぞ??」
「オヤジ!!」



勢いよくグラスをおいてなんだかベタベタする手を払った。
もう、と前屈みになってキャミソールの背中を手でぱたぱたと払った。
「前に入れたら殺すわよ。」
臆面もなく谷間を覗きながら、生返事。
ようやくイヤな軌跡を残した氷が床に転げ落ちた。





罰がようやく終わって、手に付いた滴を嘗めたら赤ワイン。
「何これ。」
「さァ。」
「サングリア?でしょ、これ。作ったの?」
まさかと思って、99.98%不正解であろう回答を聞いてみた。

「コックがな。」

「それ。まずいんじゃ?」
「だってよぉ、”お飲みなさい”と言わんばかりに冷蔵庫の中で冷え冷えだったんだぜ。」


奥の方に。


そう付け加えた。
まぁ、構うまい。
昨日の夜おいしいのが飲みたいなぁとか言ったら

「明日はイイのをご用意いたしますから」

とか言ってた。
まぁ、結局はあたしの中に収まるからイイ。



けど、これはきっと、あたしと二人きりになったとき出すはずだったんじゃないかと。

しかも、それを一杯二杯ならともかく、ディキャンターごと。



サンジの怒り狂う姿が目に見えるようだ。
そんなこともお構いなしにサマーベットの足許に座った。
ちょうど肘当ての高さに来た。
旋毛を押しながら髪の毛をさらう。堅い感触がきもちいい。

「ネェ、それ、隠してあったんじゃ??」

そうだろうな。

確信犯。



じりじり焦がす太陽。
その下で飲むサングリア。

すぐにグラスが汗をかき始める。
喉を通っていくワインとオレンジの匂い。


「流石にまわるな、真っ昼間だと。」


あたしの太股に頭を預けて、空を見上げ 眼を閉じた。


最初の一口が一番心地イイ。
この私でも軽い酩酊感が味わえる。

きっとこいつも同じだろう。
共有できるのはこれぐらい。


そういうのもイイ。


なんて事はない、何もない日。



うつらうつらしてたら、先に寝られた。
こんな暑いところで寝られる人の気が知れない。



天気は上々。


一瞬の正午に見た麗しき白昼夢。

end


1000hit踏まれたひろひろさんに捧げる「noon」
リク内容は『たまにはラブラブなゾロナミ。しかも表で。』
ひろひろさん、無茶言うよ・・・(泣)
クレユキ、ラブラブのなんたるかを解ってないおなごですけん。
でも何とか捻り出したんですが、お気に召しましたでしょううか??
もう何十回と推敲したけど、もうダメです。
許してください・・・・。
突っ返されることも辞さぬ覚悟であります。

しかし、バカップルって思った以上に苦難の道

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