ココロ
不純な動機なんて一切なくて
私の渇望するもの、それは一つ。
それを笑うなら笑うが好いわ。
だって欲しいものなんて他に見あたらないし。
たったそれだけ、
たったそれだけ。
代償を支払えば手に入るものなんか欲しくなんか無いわ。
ねぇ、そうでしょ。
そんなもの、只の自己愛よ。




目を閉じて、ただ静かに深呼吸。
深く息を吸い込んで、静寂から来る耳鳴りに息を呑んだ。


私が欲しいものはただ一つ。
 この男の凡て。


総じて私が望むのは、
今も、
未来も、
見たことのない過去も、
この手に握ること。

 何度身体を合わせても、
 満たされることはないのだろうとは知っていても、
 それでも求めてやまない。







濡れた口唇が、その呼吸を呑み込んで、
狂ったように、
この一瞬のためだけに
今があるように。
首に回した腕が引き攣るくらい、
その存在を確かめたいと願ってる。





誰もいない部屋。
私の部屋。
鍵を閉める音。
頼りないランプの灯り。
伸ばされた腕。
離れることのない口唇。

誘ったのはどちらからだったか。
どうでもよくなってた。
部屋には鍵を掛けた。
酔った振りして誘い込んだ。
罠にはもう掛かっている。



  どうぞ、召し上がれ。





「お前、変だ。」

 おかしくさせてるのはあんたでしょ。

何にも言わずに、薄く笑った。

誰もいない、部屋。
私達だけ。
密閉された、部屋。
私達だけ。

口唇は行ったり来たり。
短い距離を何度も。
何度、こうしてるんだろう。痛いくらい。
擦り切れても好いからやめたりしないで。

そんな顔を誰かに見せないでよ。
いつも仏頂面のその顔が、
私のためだけに見せる微かに上気した頬が、



「興奮しない?」



何が。



シャツのボタンを外しながら言う。
同時に私も男のシャツを脱がせた。
現れた傷だらけの身体。
生身の熱を持った、男の身体。
絡み合う腕。
髪の毛を掻き回す手。
意識なんかどこかにとんで行っちゃえばいいのに。



 それなら。



「変だな、今日。」
こうしてるときはいつもよりもっと無口になる。
私はそれが嫌いではない。
 代わりに微かに眼が潤んで、吐く息が熱くて。
半分開いた口が
掠れた声が、
私だけに聞き取れるだけの微かな上擦りが。
発情を誘った。


もどかしそうに私の下着のホックを外そうとする手。
まだぎこちない手つき。
上手に外せないなら、片手なんかでしなきゃ好いのに。
「したげる。」
いい、と生返事。ちょっと拗ねた顔。
その横顔に見とれた。
 ふっと胸を締め付けていた呪縛は解かれて、
現れたその谷に顔を埋めた。



 きつく、吸っちゃいやよ。



髪を撫でながら言う。
瞬きで返事。
頭を抱きかかえたまま、ソファに横になる。
服は剥がされてしまったから、少し肌寒い気がした。
でもくっついてると暖かい。
 その血液の温度。

お世辞にも上手でない。
無骨な手は、私以外の人をどんな風に抱いてきたのか。
胸に抱いてる頭をあげさせた。
眉に親指を当てて、ぐいとこちらを向かせる。

”なんだ。”

鋭いその視線が好き。
舌は、私の皮膚を嘗めて忙しい。
代わりに眼がそういってる。

「続けて。」

目を伏せて胸に埋もれる。
男にはないもの。
ここにどんなものが詰まっているのかと、
尋ねられたことがあるけど、
答えられるわけがない。






そこを開けられたら、きっと生きていけない。
恥ずかしくて死にそうになるだろう。
知られたくなくて宙ぶらりだった脚を足に絡めた。
もっときつく抱いておこうと、腕に力を入れた。

抗議。

「おまえさ、加減しろよ、窒息するだろが。」

それって何?
不満そうなのに、嬉しそうな顔。
ごめんね、と笑ってキスでごまかした。
上げた顔が幼く、その身体とは対照的で酷く不釣り合いだった。

「あたしがシタげるから、許して」

ちょっと、瞼をあげて、背中に回した手を解く。
代わりに私が組み敷いた。

「こういうコトする女は嫌い?」

笑っただけで答えなかった。





どこで切ったのか、眉から瞼の上に掛けて新しい傷があった。
まだ皮膚が柔らかい。
そこにキスする。
目を閉じてる顔が瞑想してるようにも見える。
割合と端整な顔立ち。
苦み走った色男。
引き結んだ口唇。


舌でこじ開ける。
すんなり道は開かれ、暫くその感触を味わった。
上手とは言えないキス。
それでも、合わさっているそこから
私に流れ込んでくるものをかぎ取る。
柔らかな下唇を噛みながら、
その視線を目で追った。
時々見せる縋り付くような目。
それだけで満たされる。

背中に回された手。
その皮膚の感触。
そこからざわざわと駆け上がるなにか。

「背中弱いからやめてよ。」
「しっててやってんだよ。」
「やらしいこと考えてるでしょ。」
「お互い様だ。」


口唇をおろす。
堅い体。
私とは正反対の身体。
絶対的な力を内蔵しているそれ。
手に触れたいと願ってきた。

手に触れただけじゃもう歯止めは利かない。
手に入れたいと今は渇望している。

身体を擦り降ろして、ベルトを外す。
上から触ると、微かに漏れた息。
ジッパーに手を掛けた。
ゆっくり引き下ろして、外から触れた。
「あんまり、みるなよ。」
両肘をついて上体を少し起こした姿で、いう。
何を恥ずかしがっているんだか。
初めてでもないくせに。



「焦らされたいの?」



もっと恥ずかしがってよ。
楽しく無いじゃない。



「どうして欲しい?」



微かに頬が上気して、声が熱を持っていて、色っぽい。
あたしの下唇を指でなぞりながら、微かに目を開けて言う。



「ここで。」



その苦しそうな声が聞きたかったのよ。
あたしのことだけを見て、あたしのすることにいちいち声をあげてよ。
息を呑む音、呼吸を中断させる音。
あたしの口の中で悲鳴を上げてるそれ。

「ナミ、ちょっと、」

ねぇ、何が「ちょっと」なの。
ちゃんと言って、あたしに判るように。
女みたいに膝を割られてるのはさぞかし屈辱でしょうね。



逃げ腰になって、
あたしの髪をかき混ぜて、
その強い掌が汗ばんで、
あたしの肩を掴むたびにあたしがどんなに興奮するか判る?
音を立てて吸い込む度、
あたしの舌がそれに絡んで締め上げる度、
あの平静を決め込んだ顔が崩れていく。
為す術もなく足の指が引き攣って、あたしの頭を何とか引き剥がそうとしてる。


「離せ、もう。」

いやよ。

「ナミ」

一瞬息を止めたように聞こえて、
その刹那膨張したその先端から体温より高い粘液がうがたれる。
その匂いにあたしは酷く咽せて、喉の奥が灼けそうだった。

「出せよ、飲めなんて言わねぇから。」

その声は微かに脱力して、
その目は微かに灰色だった。
私の口元に右手を差しだし、左手で口をこじ開けた。
口腔から流れ出る白い粘液。
差し出された手を伝って、私の顎までそれは伝った。


「お前、巧すぎ。」

私の口唇を拭った後、ベットに倒れ込んだ。
誉めているんだろうけど、詮索されてるようで気にくわなかった。
「いや?」
彼は目を閉じたまま仰向けに寝ていた。
「いいや。」
目を閉じたまま酷く自然に言われたから驚いた。
その顔が見とれるほど綺麗だった。



薄い唇から微かに呼吸が漏れていて、上に乗って口唇を寄せた。


「お前は嫌じゃねぇの?」


口づけの寸止め、目を開けてするなんて無粋。

「口でするの。」

後ろめたそうなその声だけが子供のようだった。
別格だからと言うとなんだそりゃと首を傾げる。
子供の体温そのままにその肌は温かかった。
 
このまま眠りたかった。
身体を這う手が温かくて気持ちが良かった。
しかし、そうはさせてくれなかった。
その手は段々と、あたしの足を割って、淡い茂みをまさぐってる。
「なんか、ここ、つめたいな。」
伏せられてた目が開いた。果てた後の欠片はみじんも見せないで、
欲望に縁取られた黒い目。






閉じられていたそこを節くれ立った指が割る。
濃厚な粘膜が擦れるような音がして、その音と指との動きに声が漏れる。
「なんか、この辺まできてんな。」
全面の切れ目から、すうっと線を後ろに引く。
自分でも驚くくらいだった。
「冷たくなかったか、さっき?ん?」

さっきまでとはまるで逆。
段々と延長されていくその線上にゆるゆると指を滑らせる。


「ここからでてるの、お前判る?」


その一点に勢いよく射し込まれる。
思わず声を挙げた。
「ここは熱いな。」
最奥まで射し込しこんだまま動かそうとしない。
代わりに中で何か蠢いてるのが判る。
あたしのお腹の下で優越感に浸りながらあたしの内部を犯してる男。
「はやく、して。」
淫らな願い。聞き入れてくれないだろうけどそれでも言う。
「なにを。」
「うごかして。」

いやだ。

声は出さずに口唇が動いた。
「お前が動けよ。」

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コンセプトとしては健全で、夜の話なのに健全でだったのに、
何でこんな話に!!
エロ全開じゃないっすか。あいたたた・・・・・(爆)
っていうか、健全な話なんてクレユキには向いておりません。
だから15禁サイトにしたんだし。
もう小説書いてても、おもてなんだかうらなんだか。
ところでこれフルコース書くべきですかねぇ。
なんか、人生を切り売りしてるカンジが・・・
ところでもっとロロノアさんはワイルドスピリッツを出した方がよろしいかと。
ところでワイルドスピリッツってなに?
シャーマンキング?
アンナ女将、私すごく好き。
女王様万歳!
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