気まずい関係
どうこう足掻いたって仕方がないのさ
そう思うだろ、なぁ
どっちにしたって仕方がないのさ
そう思ってるんだろ、なぁ

いいよ
俺は俺のルールでやるからさ
後で反則つったって知らねぇぞ
何が腹が立つかってそりゃ彼奴等にだ。
付け入る余地なんて潤沢にありそうに見えて、かといって踏み込もうにもそれを許さぬ。

 一言に言やぁ疎外感。

簡単に懐に入れそうに見えて、意外とガードが堅い。
かと思いきや脊髄反射で見きってんのか手を大きく広げることもある。
一度でも其処に潜り込めりゃぁ、後は絶対の、絶大なる信頼を揺るがすことはない。

一旦はお互いがお互いに依存してるのかとも思ったね。
でもそりゃ見込み違いで、独立し確立した各々の立地を侵略することもない。
それが少し羨ましく、同時に可哀想でもあった。

 そうだよ、俺は嫉妬してるんだ。それっくらい分かってらァ。





「もうルフィ、何度言ったら分かるの?」

キッチンのドアを開け放して三時のおやつをサーヴしていたら、麗しき女王陛下のお怒りの声が聞こえた。
まぁいつもの事なんだろうが、蜜柑をとったとらないだの、可愛い話で。
でもその可愛い話は食糧事情を一変させるから始末に負えない。

「そこに座ってたら危ないでしょ。」

どうやら、いつもの船長の特等席、船主に座っていて怒られているらしい。
「今日風強いんだし、落ちたらどうすんの。」
助けに行くのはやっぱり俺だろうな、といつも通り甲板で居眠りしているヤツを頭の中で除外。
「そんときゃ伸びるから平気だって。」
麗しきレディはお手上げ。

銜え煙草の儘、本日のおやつガトーショコラをトレイに載せて、お茶と共に船主に向かう。

「分かった、ほら来いよ。」

ルフィはいったん船の手摺りに立ち、陛下を引っ張り上げる。
やだよ、怖いよと言いながらその顔は笑っている。
船長がいつもするように、彼女はそこにお行儀悪く跨って座り、その背中を男は支えて手摺りに立っている。
「ほらな、気持ちいいだろ。」
「うん。」
心持ち彼女は仰け反ってルフィの腹に背を預ける。


「ナァミさぁ〜ん。おやつですよ〜vv」


こういやあの猿はすぐに俺んトコに来るだろ。
君から離れッだろ。
分かって言ってんのさ。




姿勢を崩さない。

そう言うのは美点だと思うね。何事にも筋ってモノがいるだろ。そう言う意味での美点だ。
二人を見てるとそう言うモノを特に感じるね。
なんて言うか、深い繋がり。
まぁ二人の夢ってヤツは同じ線上にあると言っても良いだろうな。
そう言うところで何か通じ合うのかも知れネェが。
特に船長と航海士には、彼奴でさえ踏み込ませないところがある。
二人が自覚をしているかしていないかは別として、想起させる部分があるのさ。


これが絆って言うモノなのかは、頭の悪い俺にはわからネェよ。
そう言うモノがこの世に存在してるなんて、今まで思っても見なかったしな。


なんで、そう言うことに気が付いたか。
何だろうな。きっと彼女のために戦ったときから、もう分かってた。
彼女が呼んだ名前は俺ではなく、彼奴でもなく。

そう言っちまうと嫉妬心ってぇモノが沸いてくる筈なんだが、左程でもない。
どうしてだろうな。

どうやら彼奴も同じらしい。
俺と同じように感じてるかどうかなんて確かめようもないんだけどな。
俺が思ってるようなことを俺以上に痛感してるのはこいつだろう。
それを彼奴も知っているんだって事を俺は知ってる。
教えて貰ったわけじゃねぇ。
だいたい尺で話しもしたくねぇ。俺は男は嫌れぇなんだ。


俺が彼女のそばに寄っていくとこいつはいつも何かしらのアクションを起こす。
でも俺以外の男がそうしてもまるで無関心だ。
単純なモノかと思った。でもそうではないらしい。





「ねぇウソップ。踵折れちゃったから直してよ。」
裸足のまま甲板に立って、両手にサンダルを振り回す。
某星だの実験をやってた男に近づいてそのまま胡座を掻いて座り込み、
何かを楽しそうに話している。
こういうときには何にも言わないんだな。

「ナミ、パンツ見えるからよせ。」

態とらしくそっぽを向きながら、奔放な座り方をたしなめる。
意外と良識派で紳士な態度じゃねぇか。及第点。

「見なきゃいいじゃない。」
「そう言うけどな、目にはいんだよ。そしたら怒るだろ。」
もうとむくれながら足をサイドに流す。
見せてみろと手を差し出し、息が掛かるくらい傍によって故障箇所を示してる。


そんな風に俺には笑いかけてはくれない。


どうしてだろうな。
この二人といるときはなんだかいつもより可愛いんだ。
時々お姉さんみたいな言い方もするけれど、それでもやっぱり素直な気がする。
やんちゃ坊主共をのことを心の底から好きって言う感じ。

俺は見たことがない。





単純ではなければ複雑か。そんな構造を持ってるとも思えないけどねぇ。
それこそ怪奇現象。
俺が彼女に近づくと目敏く見つけて監視してる男は今は眠ってる。
真逆自分を観察されてるとはおもわねぇだろうな。

恐らく、こいつも脊髄反射の口なんだろうよ。
本能で察してるんだろう。
俺は反発因子?
ではあの二人は安全圏?









なんでこんな風に欲しくなっちゃうんだろうな。
俺は誰より彼女のことを観察してると思ってる。時々自分でも気持ちが悪い。
だから、気が付きたくないところまで知りすぎる。

俺に対して無関心すぎるほど優しく振る舞う。
彼奴に対しては必要以上に絡んでいく。
君もそれを自覚して、しかも彼奴もそれを分かって衝突を繰り返す。

じゃれあってるだけにしか見えないのは俺の目が腐ってるんだろうな。
ついでに頭にも蛆がわいちまってどうにもならねぇ嫉妬心で一杯。




「サンジ君。お茶入れてくれない?」
いつもより少し小さい気がするのはサンダルを預けたままだからだろうか。
裸足で船床を歩きながら、キッチンのドアから顔を出す。
「冷たいの?温かいの?」
「うーんと、冷たいの、二つね。」

スツールに座りながら、指を二本立てて笑う姿は本当にかわいくて。

どうして二つか尋ねた。
「ウソップのお使い。」
「レディを顎で使うたぁイイ度胸だよ、あの長っ鼻。」
それを否定も肯定もせず、俺の手元を見てる。
「アイスティーならアタシのオレンジ浮かべてね。」
「一緒に愛も注ぎますよ。」
「じゃぁたっぷりいれといて、ウソップの方に。」



目の前にしちまうと実は何にも言えないって言うのが現状。
初対面の男に簡単に抱きついたりもする癖に、プライドを傷つけないで逃げる手管は流石。
魔女だ魔女だと彼奴は言うけど、
足の裏を真っ黒にしながら無邪気にすり寄る彼女は可憐そのもので。
イヤ、性が悪だから逆に美しいのか。
悪魔は美しい姿形をしていて、神の使いは醜悪だと。

本質を見抜けなくするようにするのだと、昔聞いた覚えがある。

でも男って言うのは馬鹿だからさ。
悪い女ッて言うのも好きなんだよ。


しかも俺は輪をかけて馬鹿だからさ、勘違いしちまって始末におえねぇ。







じゃぁ彼奴はどっちだ。






「ジロジロみてんじゃねぇよ、気味が悪りぃ。」

なんだ起きてたのかよ、ガキ共に餌を蒔いたあと一服つけるために階段の手すりに寄りかかる。
煙が流れてきたのか、それとも気配か。
先刻から俺が観察してたのを察したらしい。

「なぁ。」

何を言おうとしてるんだろうな、俺は。
こんな事言ってどうなるわけでもないだろうし、
しかも俺相手に真相なんて話す訳ないだろうしな。

「何だよ。」

眉間にしわ寄せて、太陽を背にした俺を睨む。
口ん中が苦い。しかも乾いて。

「お前さ、あの人をどの辺においてる?」

呆気に取られて真意計れぬと言う顔で、睨むと言うより怪訝な顔。
「暑気あたりか、お前?」

「お前の中の差、彼女の位置。」
気にせず続ける。
馬鹿馬鹿しい、とこっちに背を向ける。
無視らしい。



「そう言う目で、あの人見ることネェの?」



「馬鹿野郎。」


それが、どういう意味なのか。察しは付いたがあえて口は出さぬ事にした。
嘘なのか、それとも素面では言えないようなことなのか、或いは俺に話すに能わぬ事なのか。
まぁ俺なら言わネェだろうな。

新参者への警告。
暗黙のルールを破る、俺は嵐を呼ぶかも知れないと?
それならそれでイイじゃネェか。
退屈はつまらねぇ。
足の先から腐っていくような日常はウンザリだろ。

「馬鹿野郎」そう毒吐かれても痛くも痒くもネェ。
肯定か、否定か、警告か。

馬鹿野郎はお互い様だ。



良いようにとっちまうぞ、バカヤロウ。

end


ルナミ・ゾロナミ・サンナミな話か、と書いた後でよく考えたら・・・
ノーカップリング小説でも良かったんじゃ・・・と思い当たり青くなる私。
そう言えば、神無月さん、
『いつもゾロとナミとかカップルじゃないですか。そうじゃなくってたくさん人が出てくる小説を。』
ってえな事を仰ってましたよね。
もしかして、ノーカプ小説御推奨派でらっしゃいます????

全く念頭にありませんでした。ごめんなさい、神無月さん。
アタシはそう言うダメな人間です。
しかも裏の方が良かったですか?表に来ちゃったんですが。
後悔先に立たずとはよく言ったモノで・・・

こんなモノ受け取れるかーーーー!!とちゃぶ台ひっくり返すもOKです。
もし裏がよろしかったら、「オイ、ねぇちゃん、裏で、も一つ書けや。」と言うてくりゃしゃんせ。

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