開花時刻
さぁ そろそろお終いにしましょうか
戯言 一つ 上手くも言えやしないのに
そんな 顔 するからよ
さぁ そろそろお終いにしましょうか
口説き文句 一つも知らないのに
そんな 眼 するからよ

アンタに参ってしまったの
エェもう降参 白い旗を揚げる事にしましょう

さぁ そろそろはじめましょうか
人が人である以上
決して忘れることもなく
覚える必要もないこと

眼を閉じるだけで現れる 闇の中で逢いましょう

すぐに
この男は知らぬ
雄として牝に補食されんとしていることを
この男は知らぬ
己が撒き散らす匂いに麻痺している

私は酔う
花の咲く時期に馨る、何とも言えぬ焦燥を掻き鳴らす
夜の色
其等が呼寄せた、古てなくおぞましき





倒れ込むように腕に落ちたら、何とも言えない声をあげて。
女の性 露出して。
ねぇ征服して頂戴よ。
あんたの。
腕が欲しいんだよ。
胸が欲しいんだよ。
眼が欲しいんだよ。


その声が、
匂いが、
指が、
アタシの内側を擦って其処から剥がれ落ちてきたものさえ飲み干せるさ。


まるで獰猛な、いきもの。
はじめに口唇を奪ったのはアタシ。
首に腕を回して、脚を開いて、膝に跨って。
閉じられた目に欲情しながら。
冷たい掌に欲情しながら。


触れていただけのくちづけでは物足りなくて。
執拗にこじ開けようと躍起になる。
僅かに冷めた口唇は思うようにはならなくて、焦れた体を持て余し。

真昼のデッキ。

 誰もいない。

或る人は買い物へ。
或る人は冒険へ。
或る人は残り。

私は罠を張る。





早いなと顔を上げて、お帰りと言われる前に嗾けた。
驚く素振りも見せない。
あぁそう、ずっとそうしててよ。
関心はないと言った丁で好いのさ。

お前になどかまけている暇などないと言ってくれて好いのさ。
突き放してよ、突き放してよ。
優しいあんたなんて想像もつかないから。


蹌踉めいたふり。
嘘泣は得手。
あんたがそれで落ちてくれるなんて思っていない。
突破口、開ければ。あとは突貫好事。


なにやってるんだよとさも迷惑そうに言っては、引き剥がそうとして。
嗚呼でも未だこの体温を感じていたいんだ。



角度を変えながら啄む。
その間にアタシの腰は何故だか揺れて、過敏な神経が振り切れそうだ。
抱き返すこともせず、それに焦れた。
直に触れて欲しい。

あんたが無関心。
それが煽るから火を点けられて燃え興っちゃって。



刺して突いて可愛がってよ。


シャツの裾から手を突っ込んで、跨った男の上着を手繰上げた。
左の方から袈裟懸けにつけられた傷痕は、アタシに動揺よりももっと高ぶりを呉れた。

抱きしめると求めていたものを僅かながら得た。
薄手のキャミソール越しに伝わってきた、男の熱。
直接感じさせて欲しいのに、相変わらず目を閉じじっと何かを待っている。
私に火を点けろって事なんだろうか。
燃えているのはアタシだけで、どうともないと云わんばかりの冷静さ。
恨めしい。


左手で首を抱き、耳朶に突き刺さるピアス。
そいつが揺れた。
甘噛みすると、僅かな動揺が表立つ。
襟足、伸びてきた髪の毛。
膚と、生え際に口唇をつけて舌は撫でた。

私は無邪気に悦んで、わざわざ空けた右手でズボンの膨らみを撫でた。
ジッパーを下ろし、その中で窮屈そうにしている其れを撫でた。




「ねぇ、気づいてた??」

声が好きなんだ。


何を??

掠れる一歩手前、男の声。
性的に揺さぶられては、絡げる声はお好きなように。
あんたの口には合わぬものはないと信じているから好きなように出来る私を許して頂戴よ。

「アタシ達、もう一ヶ月‘して’ない。」

焦げつく太陽、熱線は灼いて。
嗚呼、其れだけで熔けて居る訳では無いのよ。
焦れったくしないでよ。
嗚呼、もっと先走って頂戴よ。

真っ昼間から、さかりやがって。

卑しき者、愚かなる女、甘い毒、どうか其奴等全部込みで。
私を見る目、どこか許してる。
悦楽の畔、触れては爪先を濡らして。
それがどうしたとでも言いたげでいつもながらあんたのその仏頂面には眩暈がするほど。
あぁ此の顔、今なにされてるか判ってる?
今アタシの手が何処に在るか知ってる?


「今ここでか。」


あんたは其れでもその顔で語る。

うん。

「行儀が悪いな。」



態と賺した風情。
さもしく笑うは私、孤り

何処か膿んでるのかも知れない。
炎天下、遮る物なんて何一つ無い。
こんなところで致したいなんて狂気の沙汰。
退けろと言われてもそんなことは聞き入れたり出来なくて。
リズミカルに揺れる腰。
どこか触れられただけで軽くため息をもらす。

「ケダモノだな。」

アンタこそと言おうかと思ったが、悪い?と返した。
その答えが気に入ったのかイイやぁと笑う。


軽く口唇が触れ合った。
私は差し出されたそれに夢中になりながら噛みつく。
いつもなら舌さえ入れないのに、今日は。
両の手は行くつくところを探して、髪の毛をまさぐる。
襟足から指先が入り込んで、催促した。早く脱がせてと。

「いやらしいの」

その言葉で火照る。




嗚呼、最早私を止められる物は何一つ無く。




男の手はだらりと何処へむかふ事もなく、床に甲をつけたままだ。
舌と、目線だけが忙しなく。
目蓋の裏でどんな色を思い浮かべるのか。
極彩色の蝶々か。
ひらりひらりと舞い降りては、毒の鱗粉を撒き散らし。
左程熱心でもない様子は、心掻き立てては。

「欲しいようにしな」

私の背後にある太陽に眼を眇めて、口唇に張り付いた髪の毛を指で拭い振り払う。
言われるまでもなく、私は自分から下着を降ろした。
なんにも怖いことなんか無かった。
男の利き手を取る。
骨の太い、節くれ立った堅い手だ。
掌には微かに汗を掻いている。

その手を取って、指先を舐めた。
いつも恍惚と嗅ぐ男の匂い、そして微かに鉄の味。
爪先から、じっと私の舌が伝う。

五本の指を掌に繋ぐジョイント、薄い皮膚の下から血の流れる流音が聞こえる。
長い指を口の中に含むと、どうしても喉の奥に突き当たる。
呑み込み切れぬのは、あれと同じか。
結論に思い至った両者。
暫し睨み合って。

どちらが奢り、どちらが屠るか。

 迷う時間すら惜しいの。

舌の上を動く指先がおいでおいでと、もっともっとと呼んで。
人差し指だけだったのを無理に私の口の中に中指も挿し込む。

息苦しさは夜の模倣。
凝視する視線は静か。
息が上がる。
胼胝の出来た指は括れを真似た。
舐りながら思うのは「開花時刻」。

 嗚呼、もうすぐだ。

私の左手は未だ、彼の雄を触っていた。
指先は誰のものか知れぬ滴りで滑らかになっている。
小波の音はすぐに消えていくのに如何してこの音は耳に焦げ付き離れぬ。
濁音と撥音が混じり合う反響。
呑み込めぬ儘にした唾液はだらしなくこぼれ落ちた。

舌を伸ばした。
二つ指を吐き出す。

微かに頭が動いた。
銀のピアスが重なって鳴る。
涙目の視界は朦朧とした。

自分の唾液で濡れた指を降ろす。




時間だ。




開いて立てている膝が、悲鳴を上げた。
眼を上げる。
動揺は直ぐ様納得に代わり、加虐の色が浮かぶ。
なんのアクションも起こさぬ他人の手、男の手。

自覚はあった。
脱ぎ捨てた下着の内側は濡れて湿っているだろう。
彼の左手の指先が泥濘んだ其処に触れている。
私が持っていった先、甘い甘い。
触れただけで動く眼。
睨め返せば求められた口唇。
そのまま、嗚呼と言う間もなく組み伏せられた。

そう、早くいらっしゃいよ。






須く、花は生殖器であって私たちの其処と同じだ。
容易く握れば潰れてグロテスクな残骸になり果てる。
咲いている時間は短く、今宵には閉じてしまう。

あぁ早く摘んで。
そして直ぐにその口で啄んで蜜を呑んで頂戴よ。

開花時刻、間もなく刻限。



end


何となくタイトルがイヤラシイですね・・・・・・・・いや色々隠語チックでさぁ〜
濃いめのゾロナミ書こうかなと思っていたんですが、なんだか妙にライト?
因みに今日は字が書きたい気持ちだったので
がしがし殴り書きして気に入ったフレーズだけ書き出して繋ぎ合わせているので
内容がないかも知れません。
まぁその辺は焼き直しすると思いますが今日はご勘弁下さい。
久しぶりに思いっきり好きな物を書いた。

あぁでもこれ、実は今度開催される入浴祭に続きを書こうと思いますのよ〜v
と言うわけで何となく続く。
エロシーンはもういいや・・・・・

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