快援隊女性隊士生活向上委員会




快援隊を組織するメンバーはほとんどが男性である。
しかしながらその中でも少数の女性が乗船しその業務の一旦を担っている。
男女雇用機会均等法というものがあるなれど、男女比のバランスはおよそ一対九である。


十数名で始まった快援隊なれど、古参メンバーのうち女性は陸奥一人きりであった。
だんだんと事業を拡大して行く内、
現在二十数名の女性が乗船するようになったのは最近のことである。


確かに船乗りと言うのは、かつての歴史上男所帯が通例である。
これは帆船の時代にあって力仕事が主だった操船に拠るところも多いとは思う。
しかしながら宇宙の技術の粋を集めた戦艦は力など必要としなくとも操船は可能であるし、
機械化の進んだ現代であるならそれは不要な要因である。

実際、宇宙海賊を捕まえてみれば総員すべて女だったという事例もあるくらいなので、
これはすでに排斥を要する要因であると考えていいだろう。

また忌まわしい謂れもある。
船に女を乗せると沈むぞという。
これは海神が女神と言う信仰が各国各地にある所為でもあるからだが、
つまりは男所帯で女がいると争いの物とになると言う、
男のまったく古代から変わらぬ性を示している暗喩のような物だ。
争いの物とになると仕事が捗らぬ、連携が上手く行かぬ、
したがって操船ミスで船が沈む。

簡単な図式だ。

しかしながら、




選別主義である、
フェミズムに対する背信である、
明らかな法律違反である、



我が快援隊に於いてはそうとは言いがたい。



何のことは無い。
隊士募集を掛けたところ、女性が殆ど集まらなかっただけである。



ちなみに採用主の坂本はおなごが来たら一にも二にも無く採用だといっていた。
女はよう働くぜよという彼の持論、
というより最強にして最恐の姉の影響も手伝っているとは思うが、
最たる理由は女好き故でもあろう。
女好き云々、これは明らかに上記の選別主義に値するとは思うが。

ちなみに快援隊の隊士募集の内振り落とされたのは、

犯罪に手を染めている、あるいは現在指名手配などになっている者、
返済しきれない借金がありそれから逃げ出す為募集した者、
大病を患っている者。


以上である。


一つ目の犯罪については、すでにお勤めを済ませているものは採用の基準にした。
二つ目の借金については、踏み倒しの危険性がある借金を持つものに関しては悉く排除した。
三つ目の大病については激務になるであろう艦での生活に支障をきたすためとした。

以上のかなり緩いとも言える採用基準である。

つまりは烏合の衆とも言えるが、
危険極まりない宇宙へ行くなどと言う酔狂な輩を集めるのであるから、
四の五の言っていられなかったのも事実である。
腕っ節自慢の者から、天人迎合によってリストラされた者やら、
前科持ちの者で更正意欲があるが社会に受け入れてもらえない者、数多悉く採用した。
最後など無論、リスクはあるが頭である坂本が二つ返事で善しというのであるから反対の仕様が無い。

しかしながら意外にも彼らはよく働く。
彼らは坂本に私淑し、行き場の無い我々を受け入れてくれたと大恩を受けたと宴席で泣くのだ。




さて話が逸れた。
隊士募集で集まってきた稀有な女性メンバーの話である。

世の中には物好き、いや自社の悪口、
ともすれば自分をも否定してしまうがおそらく物好きに分類されるであろう稀有な人種だ。
宇宙へ行きたいという者も確かに居たが、
いずれも隊士募集の説明会で一説打った坂本に何故か魅了された者であり、
自由で明瞭、かつ進歩的な社風に惹かれたと言う。

しかし、入社してすぐに坂本へ魅了された部分は消え、
とりあえず社風だけにはいまだ靡いているのが現実であるが。

故、快援隊発足時からは数倍に増えた隊士共々に女性も増えた。

仕事は多岐に渡る。



営業職でマーケティングやセールスに従事する者。
機械課、設備課に配属され、船の内外のメンテナンスを行うエンジニア。
秘書や営業補佐等、裏方として目立たぬが絶対に必要な事務処理を迅速に行うエキスパート。
あるいはオペレータ、雑多多様な通信業務や操船を行う者など様々である。



しかしながら。



少数派という者は民主主義に於いて蔑ろにされる傾向があることも事実。
それ故、快援隊の内部組織の一つとして女性隊士生活向上委員会というものが作られた。
つまり、男性社会である艦の中に於いて少数派の女性のために作られた組合である。

曖昧な名称は多岐に渡るであろう要求を簡単に通すために敢えて曖昧にした。
入れ知恵したなと坂本に言われたが空惚けておいたのは言う迄もない。

組合の活動の主な物は、月一回会合を開き社に改善要求事項を提出したり、他部署との交流が主である。
また時折企画なども持ち上がり、企業としての企画は無論だが社内行事なども企画立案実施まで執り行うこともある。

このような内部組織は男性側にも存在するがそちらはあまり活発ではない。
しかしこと女性隊士生活向上委員会からの要求改善申し入れの数々は、相当数採用されてきている。
ボトムアップ式の図が上手く運ぶのは社長へ直々に物を言える陸奥の力とも取れるが、
実際その理を受け入れる坂本の懐の深さによる物でもある。


女性隊士生活向上委員会メンバーは無論その事を知ってはいるが、
口に出さぬのも事実である。

以上が快援隊女性隊士生活向上委員会のあらましである。



なお、以下俗称の女子部と簡略して呼称する。








WRITE / 2008 .2 .11
始まりました馬鹿馬鹿しいシリーズです
妄想の頂点のような感じですが、すいませんこんなの妄想の初期段階です(笑)
兄銀で「快援隊って女子働いてんだ」と思って妄想したまでです。
ばかばかしく続くと思います。
ちなみにコレは序章。
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