fire
happy birthday to you


12時を廻った。

手元の時計はいま十二時十五秒過ぎ。
時計のムーブメントが刻む音。

別段嬉しくもない日。

又一つ年を取ったってだけ。
まぁ、こんなもんだろ。


今日の仕事は終わり。
自分への労い。
上等なのを一本選んでテーブルに置く。
キッチンの椅子に腰掛け、一服。

儀式のように煙草を巻く。巻紙を舌で湿らせ、指でなぞる。
乾いた口唇に銜えてポケットを探す。

火。

こういうときに限ってマッチがない。




「使って」



差し出されたのはオイルライター。
艶消しの、シルバー。
誰かと思って振り向くと、化粧を落とした後も何ら変わりない美しい人。


「ナミさん。」


「どうしたんですか?こんな夜中に、」

質問には答えず、洗って置いておいたグラスを手に取り戻ってきた。。

「ご相伴に預かろうと思って。」

真向かいに座るのかと思ったら、隣に来た。
栓を抜いて、静かに注ぐ。けれど微かに泡だった。
手が震えた所為。



「点けてあげる。」



さっきのライターを手にとって、蓋を開けた。独特の音、オイルの匂い。
シリンダーを回す。

炎。

彼女の手の中にある揺らめきに、先端を近づけた。
焦げる匂い、煙草の匂い。



「ありがとう。」

一口目を吸ってそれからお礼。


「デモね」



「こういうこと、他の男にしちゃダメですよ。」

安く見られるから、煙が掛からないように余所に吐き出しながら言う。

誰にするのよ、ライターの蓋を弄ぶのを見ながら笑う。
ありがとうと、返そうとした。

「あげる。」



何か貰うのはこれが初めて。

「プレゼント」

柔らかな口唇がしなやかに動く。

「お誕生日でしょ、今日。
 もう一分過ぎちゃったけど、乾杯しましょ。

嬉しい。
只、単純に感動していた。
この人がこの日を覚えていてくれたことにも、そして祝ってくれたことにも勿論感動したが、
誰かにこんな風に特別に祝ってもらえるようなオトコであったことに。

「何に?乾杯??」

「あなたの、これからの一年がすばらしき日になりますように。」

一瞬高くガラスを掲げ、注がれた赤い液体を少し嘗めた。
同様にして、一口。喉の奥が熱かった。

「今日がその一日目?」
頂戴というように、シガレットケースを探る。
「そう?」
巻きかけの煙草を一本、差し出す。
口唇に銜えたすぐ後、、さっき貰ったライターで火を。

 着火。

「そりゃ又、素敵な。」
彼女の顔がその炎で赤く染まったのを見てから、蓋を閉めた。

夜が溶けたような、闇。

煙草を挟む指の上に、俺の手を載せる。
厭がりもせず、載せられた指の股を撫でた。

口唇の味は、甘いヴァニラの香り。


「おめでとう。」

離れた口唇からは、香水と煙草の匂い。

それは俺がつけた初めてのものだった。

                                                      end


男が女の煙草に火を点けるのって、いいよね。
逆はいけないらしいが。
まぁでも、お誕生日ですからいいでしょ。
サンジ君てマッチですよね、確か。渋い。
そして、銘柄はガラムなのね(ありきたりでスマン)
そして、ありきたりな話でスマン
しかもちょっとenvy噛んでる?

サンナミって難しいよ、しかもおめでたい話だし??
甘々なんて向いてないし。
ところでクレユキ、一時期ライターをよく無くすんで、
喫茶店とか飲み屋のマッチを愛用してたんですが、
マネージャーに「渋い。」とか、彼氏に「オヤジ」とか言われたので、今はオイルライター愛用。
ゲーセンで取ったルパンと不二子ちゃんのヤツ。
酔っぱらって、¥1000くらい注ぎ込んだ・・・。買え。
ホントはジッポが欲しいんだけど、あんな高いライター無くしたら泣くし、
まぁ似たようなモンだからいいや。
しかし、\200で取って貰ったサークロコダイルとオールサンデーのライター

使うに使えない・・・・。どこで使おう・・・。
やはりあの場所でしか・・・。


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