道連れ
どこまでも手を引いていくわ
あなたの前を歩くのは、私
背中を追っていらっしゃい
いなくなっても探しだして連れて行くから
どこまでも、どこまでも
今からも、これからも、
それから、この世の果てまでも
いつもの夜だった。
いつもの、代わり映えのない夜。
二人で飲んで、喋って、それから?

いつもの夜のように。



こんなに声を出したら
薄い壁の向こう側に聞こえてしまうんじゃないかしらと、
不安がよぎるくらいのクリアな思考。
でも、それを自制することが出来ない位の精神状態。
みっともないくらい脚を開かせられて、強く揺さぶられる。
まだ慣れない。
口唇が乾いて、痛いくらい。
舌で、湿らせてからキスした。
絡んでくる、彼の舌。
巧い下手で言えば下の中くらい。

でも、段々上手になってるから、好い。
この身体の奥に押し込められてるその存在を感じながら、
ぼやけていく思考回路と逆に研ぎ澄まされていく本能が
とても浅ましく感じた。





こうしていたってまた朝には離ればなれ。
一人寂しく冷たいシーツの隙間で眠るのよ。
今だけ、今だけ。

そういつも考える。
朝になれば、また逢えるのは判っているのに、
なんでか寂しくて寂しくて、酔った振りをしてその身体に倒れ込んでしまう。

それを知っているのか、知らない振りをしてるだけなのか。
寂しいなんて一度も言ったことはないけど、
犬を撫でるみたいに髪を撫でてくれる。
髪だけじゃなくて、
もっとその手に触られたくて、
自分からその膝にのって口唇を寄せる。

それでも何にも言わない。
ただ黙って、ただ黙って。
為されるが儘に。

どうせならがらくたのように扱って欲しいのよ。
あたしになんて興味なんて無くて
只あたしの身体だけが欲しいと言ってくれれば、それで好いのに。
こんなもので手にはいるなら安いものだわ。

この人が口下手で良かった。
こうしてる間はあんまり喋らない。もっと無口になる。
それがイヤじゃない。
よく謳う男は嫌い。
その視線であたしを融かしてよ。

勝手に身体の奥では熱が上がって、脳震盪を起こす手前。
名前なんて呼んだこと無い。
けれど、あたしの中はあの男で溢れて垂れ流し。
情念と本能で足下は水浸し。
温い水が足の裏を濡らしてる。



どうかしている。



うたたねていたら、昨日の夢を見た。
昨日の夜の夢。いえ、現実の追想。
時間軸は悠々と平等に流れた。
足の裏を濡らしたのは突風で倒れたグラスの中身。
氷が全部溶けている。
「陽に焼けんぞ。」
頭上に見えた太陽の中の影。
「起こしてくれればいいのに。」
少し赤く火照る頬を手でさすった。
「気持ちよさそうだったしな。」
珍しく頭に巻いてるバンダナを取ってた。
「何するの?」
「暑いだろ」
見ると、角度を調整してパラソルの向きを変えてくれていた。
ありがとうと素直に礼を言う。
少し年下の男の子。
でも一番あたしのことを気遣ってくれてると思う。
サンジ君とは別の所をよく見てる。

「足洗ってこいよ、べたべたすんぞ。」
モップを掛けながらバスルームを指さす。

言われたままに裸足のまま戻ってきたあたしに向かって、
サンダル焼けしてんなと笑う。
確かにストラップの跡がくっきりとついてる。
暫くそのままでいろよとまた笑いながらいった。

「寝てねぇの?」
床の湿ったところをさけて、サマーベットに寄っかかりながら私の足下に座った。
何故と問う前に次の質問。
「それとも夜のために寝てんの?」
ばか、と吐き捨てた。
そういうことを行っても普段の子供っぽい顔のままで言うから怒る気は失せた。
でも顔を見る勇気はなかったので、サイドテーブルに置きっぱなしだったマニキュアを取った。

瓶の蓋を開けると特有の揮発油の匂いが鼻についた。
瓶の縁で筆を整え、塗りかけだった手の爪を塗る。
「なぁ、それさぁ。」
男はこういう匂いは嫌いなんだった、前にもゾロに怒られたことがある。
「ごめん。いや?」
一呼吸。

「ちょっと塗らせて。」

あたしの腕のすぐ下に顔がある。
無邪気な言い方。
絵の具を遊び道具にしてるこの人ならではの言いよう。
「そうして上げたいけど、もう手、塗っちゃったから、又ね。」
「足があるだろ。」

床に寝ころんで、あたしに背を向け私の手からもぎ取った瓶を床に置く。
足の指を軽く支える、暖かいウソップの指がくすぐったい。
「ねぇ。なんでこっち向いてしないの?」
素朴な疑問。
「中身が見えるだろ。」
サンジ君なら喜んで黙っていそうだけど、と言うと
「疑いねぇ」と鼻で笑っった。

「なんか、あったか?」
低い、声変わりした後の男の声で言う。
何も、とはぐらかそうとした。
ホントに、あいつとの間には何もない。
別に諍いを起こしたとか、喧嘩をしたとか、そういうんじゃない。

「あんたさ、寂しいって思ったこと無い?」
んー、と気のない返事。
「あんた自分から話しふっといてそれはないでしょ。」
「お前、寂しいのか?」

聞いてないようで聞いてる。こいつはいつもそう。
見てないようで、ちゃんと見てる。
頼りにならなさそうで、一番信頼してる。

「どういう、さみしさ?」

私は、その信頼に値する彼の背に向かって話す。

「本当は、
 私なんかは、
 あいつの中には、
 いないんじゃないかっていう、
 さみしさ。」

お前、結構馬鹿なんだな。哀れむように言う。


「あんたはそんなこと思ったこと、無い?」

背を向けたのは、スカートの中身が見えるから、と言う理由だけじゃないんだろう、きっと。

「俺がそんな風に思うのは、贅沢だ。」

相変わらず背を向けたまま。

「俺が置いてきたのに、そんなこと思うのは、贅沢じゃない?」

はみ出したマニキュアの筆が足先をくすぐる。

「忘れ、ちゃうの?」

こいつは、待たせる側の人。
ずっと待つのもつらいけど、待たせる方だって、きっとつらい。同じ時間を「待って」いるから。

「忘れないよ。なんで、忘れたりする?俺が帰るとこはあそこっきゃねぇ。」

できた、と小さく言い、瓶を閉める音がした。

「待っていてくれとは言わないし、待っていて欲しいと、思わないって言うのは嘘になるだろ。」

立ち上がり、私に彼の手で暖まった、瓶をこちらによこす。。

「ただ、生きていてくれるだけでいいのさ。」

その言い方は私の中にすとんと落ちた。
当たり前のこと。優しい人。大きな人。ゆたらかなひと。
太陽の中に彼の影がある。
まともに見たくなくって、足元を見た。
爪の上に花びらが書いてある。

「さっすが、器用ね。」

またやってね、と言うと、首を横に振る。
なんでよ、けちと無駄だとわかってむくれてみた。
と、指でそっとある方向を指す。


「あっちでな、すごい目をして睨んでるのが、二人、いるんだよ。」
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ウソナミ?
イヤ、何となくウソップって経験豊富そうな感じ。
っていうか、ペディュアとかやらせてっていうタイプじゃない?
いや、個人的に女のマニキュアを塗る男ってのが好きなだけ??
何故そういうことを考えるかと言いますと、
あの船で一番女心が解っていそうなのはウソップさんかなって?
っていうかー、単純に、かっこいいと思ってる私。
えぇ、キャプテンウソップを。
本気か?とよく聞かれますが、メラ本気ですよ、クレユキ。
っていうか、かっこいいよ。
どこが??ってきかれても好きなんだからしょーがない。(うわー・・・)
あーなんつーか、よく人のこと見てるよね。
優しいし、親身になって相談乗ってくれそう。
こういう人の方がホントはモテるよね。うんうん。
っていうか、ぶっちゃけあたしの好みなんですわ。
っていうわけで、ゾロナミだけど、ウソナミ。どうなるMrブシドー・・・・

でも又書くよ。ウヒヒ。

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