また会ったときだなんて、よく言うよ。
もう出会えないかも知れないのに。
でもいつまでもいつまでも思うだろうと、おまえの姿が消えるまでその方角を見ていた。

サヨウナラとか気の利いた事なんて言えず終いで。

真っ黄色の月が夜を照らしていた。
お前はあの時どんな気持ちで言った?

「キスして」


だなんて俺に。


泣きそうなのを堪えるときおまえはいつだってその目を一杯に開いて喰ってかかる。
同じ顔をして言ったのにはちゃんと理由があったんだな。

「馬鹿だよなぁ、最後の最後まで。」



俺は暫く俯いて、昨日触れた口唇を思い返した。
もう、見えないあの国に、目を凝らしながら。


bird cage

甘いお菓子をあげましょう
抱いてキスしてあげましょう

君の船が海原をゆくとき
白い軌跡を残すでしょう
私は陸で見送りましょう
私は止まり木がなければ生きられぬ

子守歌を歌いましょう
抱いて眠ってあげましょう

私は君の船に波をうつ
消えゆく泡になりましょう
私は儚く漂いましょう
私は此処に漂いましょう

君は空の鳥籠を持っておゆきなさい
いつかその籠の中に鳥を飼うとき
青い鳥をおいれなさい
君の手から飴を啄む青い鳥
君が空に逃がした、もう見えぬ青い鳥
足許に絡み合う無数の糸
どこに向かっていて、誰と繋がっているのか
未だ先があるのだろうか。


 堪えるばかりが美徳ではないと教えてくれたのはあなたでした




私はあらかじめ知っていたのかも
君との糸は絡まる事もしていないのではと

交わっているように見えて糸は空を漂い
傍目には交差していても一つも接点はなく

君の糸は何処?
私の糸は何処に繋がっている?







知らないフリをしていたにもかかわらず視界の中に入って身の内を占拠。
次第に浸食されて岸壁を撲つ浪の音。
後がないとおもいながら、打ち消すは恋心。

「なぁお前が生まれた国ってどんなところ?」

とても暑い国よと思い出す。
もうすぐ見せてあげられるわと遠く海原の蜃気楼。
長く続いた旅の果てに出会った君は、出会って間も無いのに命を懸けた。
なんのために、そうでしょう。
「私」というには烏滸がましいだろうか。

裏も表もない、でも決して中身がないわけじゃぁない。
そう言う人だった。
全てを知っているような、何かに待たれているような。

一つ所に止まることができぬ、そう言う宿命を見ていた。


 未練。


私は一度も彼の手から何かを携えて貰わなかった。
手を取って貰ったこともなかった。
在るのは、枯れた涙を絞り出させた。
君のその魂の欠片。




西の空には空にはもう太陽はなく、寂しげに浮かんだ月は足許を照らす
私は彼の腕を引く。
群れから離れて、此方へと。


いとも軽やかに運命をすり抜けて、笑って見せたのは先が見えているからだろうか。
いやきっとそうではない。
先ではなく、今を生きているから。

そうやって彼は道を踏むのだろう。
私とは到底違う、道程。

赤くたなびく雲は、泣き出しそうな空を教えた。
私たちが消えたことを怪しむだろうか
あぁもう少し

「ねぇ、ルフィさん」

わん、と耳鳴りがするようで。
声は掠れる。

ねだったのはこれだけ。
いいようとおどけたふりなのか、妙に語尾は上がって
斯様の様に私が笑えばそう思えばとか言っては



「キスを」









私は初めて彼にねだった。

真っ黄色の月明かり。
それほど眩しくはない。
影もできぬほどの闇だ。

私が口唇を開いてからどのくらい経ったろう。
少し考えた振りをしているのだと思った。
私は彼がそう言う事に興味がないことを知っている。
目を上げようとしても、彼の歪んだ口唇が相変わらずそのままの形であったこと。
爪先が何かを悩むよう行き来していたこと。

一歩踏み出さねば私の傍には来られない。

遠くの方でコヨーテの遠吠えが聞こえた。
鳥が気味悪く羽ばたき。

こんな時サンジさんなら額にキスしてくれそうだ。
Mr.ブシドーならバカ言えと言うだろう。
ウソップさんは恭しく跪き、手の甲に一つ。

私が望むのはその誰からでもない。


君から。



黒い影が忍ぶ。
爪先に掛かる。
三日月棚引く雲が隠した。


その大きな黒い目に見つめられては身動きがとれなくなる。


その刹那、私の口唇は塞がれた。
微かに湿った表面がぎこちなくまさぐり、行き場を無くした私の掌は何処へ行こうかと君に問う。

彼の手は何を躊躇うことなく私の両肩に爪をたて、
喰い込むのが痛い。
でも痛みすら覚えておきたいと。

途切れた月光、それも間もなく再び刺す。
雲が月の前から立ち退く時、その口唇も離れた。
息をしていなかったことに気がつく。
肩で呼吸する私を見て、手を離す。

離れかけた手を取る。
私は後ろ手にドアを開けた。

今自分がどうなっているのか、自覚したのは闇に目が馴れてきた頃。
ずいぶんとせっかちだなぁ、変に余裕がある自分が滑稽。
潜り込んだドアの隙間。
閉められた音と共に再びはじめられたくちづけ。

外も内も闇が浸食してそれに呑まれぬように手探りで背中を抱いた。
先刻お風呂に入ったばかりなのに、なぜか獣の匂いに似た薫り。
そう、コレがあなたの匂いね。

もう少し続けてよ、離れないで。



口唇を押しあてて、どうやって息をすればいいか分からなくなる。
隙間から揚々の丁で息を吐き、もう一度重ね合った。
肩を掴まれていた手はとうに私の背と胴を抱き、触れられた其処がどくどくと脈を打つようだ。

出された料理を一瞬で平らげるその口は今や別物で、
私の同じ器官を啜りあげては離す、繰り返し。


 きっと君去りて後、私はそれでも君を思うでしょう


闇に溶けた黒髪は私の頬に掛かり、私の髪の毛は君の指に絡まり。
決して上手ではない君のくちづけの技巧は、それでも私の体を火照らす。


 誰かほかの人と体を重ねても今日のくちづけを思い出すでしょう。


「ビビ?」


 それを疚しいとはおもわない。



ごく間近であなたの顔を見たのはこれが初めてでした。
何を問うの?
ネェもう少し此の儘でいさせてよ
あなたの内に或る夢を私に愛させてよ。

「気は済んだか?」


未だよ、まだ。
もう少し、もう少し


君の匂いが此の身体に染み込むまで。








「忘れえぬ君を、想フ。」


君去りて後、海賊が来たぞと言われれば私は胸が騒ぐでしょう。
既に消えた左腕の印が疼くでしょう。
さようならではなく、また会いましょうと
そう言って別れた君去りて後。











赤くたなびく雲は誰の、だれの泣き顔か。




一人で行くと決めた時に
確かに心は宿命と言う声を聞いた
咲いては枯れ往く花のように
粛々と、海原を行く君を見送りましょう。

名もない、青い鳥は違う明日を迎える君をいつまでも思フ。
いつまでも、いつまでも。

end


この話にはモデルがあってですね、ミスチルのbirdcageちゅー歌とcoccoの「強く儚いものたち」。
どっちも別れの歌でしかも前者は神が我々をつがいで飼おうとして失敗したので別れてしまうだのとか
後者は「あなたのお姫さまは誰かと今頃腰振ってる」だのまぁそういう歌なんだけど、
私的にルビビなんだ。(しかし後者はナミ嘘でウソカヤでも行けそうだが・・・)
って言うかさ、世間様じゃぁラブラブなルビビが多いというのに、
こうもウチの姫と海賊王は・・・って具合だな。

ちなみにこの話を思いついたのはゾロナミばっかりで嫌気がさしてた11月(笑)
古い巻を読み返していて冬島編と来てinアラバスタ「俺達の命くらい〜」
船長にはねぇこの辺でいつもやられてはss書きたくなるよ
そう言うカンジです

あと個人的にはペルビビも結構推奨・・・・・・・年齢差カップル万歳・・・・・
因みにこの話はこれから続いてるのでそっちも読むとお買い得かも(?)
此方は美人祭2に寄稿させていただいた。
因みに裏ver.もあるけどそれはまた今度。もう間に合わない・・・・・


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