「愛シニ来テ欲シイ」
どうして 此処にない。
知り尽くしたはずの体

残骸は要らないって言うの

でも覚えておいて。

君の声は此処にあって
君の体温は此処に置き去り
其奴等 全て掻き集めてもまだ足りない。

どうして此処にない

来てよ
ここに来て

私の居るところまで
正午過ぎ。


ちょうど死角を選んで蜜柑畑の隅に二つの身体は埋もれ、
餓え子のように貪る口唇からは芳しき君の香り。


膝を割った脚は火照ったそこを擦り上げ、私が呻くとより強く深く口唇を押さえつける。



男の片手は私を支え、
男の片手は如何にして見つけだしたか。


私の皮膚上に張り付く血の通った釦を探し上げ、
時折揺さぶる足が触れた其処に焦れったい感覚を植え付け、
更にそれに触発されるよう凄まじき官能を呼んだ。





既に立っていられないほど麻痺していて、
少しでも私が誰かしらの射程範囲に入ろうとすれば、
腕に力を込めきつく引き寄せる。


男の指が直に膚に触れる。


スカートと上着の狭間の隙間を保って、私を支えている。
その手。


お留守になった片手は何処、と視線だけで探す。


「・・・ァ。」


奥歯を噛んだ。
急に、突き立てられたその太い指が私の中を掻き廻し、乱す。
彼の手はどうやったものか、私の下着の中に易々と侵入を果たし
深く深く入り込んでいた。




温い日向水が、私の中から溢れてきて。




どうやって見つけるんだろう。

私の、スウィッチ。





「これ、どこから出てるか知ってるか。」





顔を上げる。
いつもと寸分違わぬ涼しい顔をしていた。
少し褪めたような、沈黙。



「ここからだ。」




入り込む私の深い穴に射し込んだ儘、手前の小さな膨らみを擦る。




飲み込むには大きすぎる反動が私の身体を仰け反らせ、
それを内側に留めようとでもするのか、その強い手は思い切り私を抱き潰す。

身体をひくつかせながら逝って、それに屈した私を見下ろす。



千切れそうだ、容易く私を操るこの男に引き千切られそうで。
目を上げた。


相変わらす褪めた儘の顔色は、冷徹と言うより残虐に近いような気がした。
けれど、目が離せない。
どうしてだろう。





勝者ぶりやがったその横顔はどう考えても私の欲しい物そのものだったし、
常だって苦い顔をしてるのは平静の証。

どう考えたって、アンフェア。



私と繋がっていた手を抜くと、滴が床に散った。
手に付いたクリームでも嘗めるように、舌を出してそこにゆっくりとスライドさせる。



「お前の。」



下唇に触れた彼の指が潮風に嬲られた後だった所為か、冷たい。



「嘗めな。」



瞬きの狭間にそこから一滴、男の中指に零れたのが見えた。



ゆっくりと口唇を開くと、緩慢な動作でその指は再び私の中に侵攻を始める。
舌の上を辿って、私の二つの体液が混ざってゆく。
緩んだ神経が一気に崩れ落ちそうで、支え手無しでは全くと言っていいほど立てない。
彼の匂いと、私の匂い、それからどこからかする蜜柑の匂い。
混ざって、おかしくなりそうだ。




早く、欲しい。




物欲しそうな顔を見透かされたのか、顔を見た途端、嗤う。
口の中から指を引き抜くと、口唇の上をなぞった。








「服を脱いで、待ってな。」







耳朶を噛むこともせず、
只微かに口唇の先が触れるか如く、
私の耳元で。


背を向けデッキに降り立ちながら、こちらをちらとも見ないで去る。


先刻まで、男が背を預けていた場所に同じように凭れ掛かる。




  「服を脱いで、待ってな。」




声だけを置き去りに。








馴染んだシーツを剥がして新しい物に取り替えた。
まだ強つくその手触りが、あの男の膚を連想させて孤り突っ伏し目を閉じる。
まだこの上には私の匂いしか乗っていない。
胸深く吸い込んでも彼の欠片は微塵もない。

 残っているのは、声と、先刻の体温。




それから。




甘美な摩擦を浅ましいほど待って、焦がれて。

沈みかけた炎が熾きて。
二度とは戻らない疵と言われた左肩の傷より膿んだ私の其処は、
惨めなほど待ちわびて。

「いつ」と言う約束ではない。
待っていろと言われただけ。




抱キニ来テ欲シイ


逝セニ来テ欲シイ


愛シニ来テ欲シイ



男の手が触れた軌跡を辿る。
脇腹をゆっくりと這い上がって、乳房へ。
彼の手は、己の手よりももっと大きくて堅い。
ささくれだった指先が皮膚を刺激した事を思い出す。


  アレは麗しき白昼夢?

  いいえ。


今まだ膚の上に残っている指先の重み、
息遣い、
そして声。


何故今、此処にない。


スカートの中にゆっくりと手を入れた。
自分で下着を引き下ろしながら、音を立てないよう慎重に床の上に降ろす。
誰に見られているわけでもないのに。

触れたところはもう溶けて、爪先が浸かるほどに泥濘に。
先刻よりももっと。

意地汚く背を丸め、君の声を反芻する。





「これ、どこから出てるか知ってるか。」





知ってる。
君の声を聞いただけで、もうこんなになる。
見えない糸が絡みつき、それが呪縛となって締め付ける。
忌々しくも望んだ結果。



先刻みたいに、なんで逝けないんだろう。



君がいないから。
此処にいないから。
此処にその身体がないから。

君の声が聞きたくて、
耳を澄ますけれど耳庭に辿り着くのは淫らな水音ばかり。



名前を呼んだら、来る?
来て。



「・・・ゾ・・・ロ・・・」







「こうするんだよ。」



私の背中に覆い被さる重さ。待ち焦がれた、かの声の主。



「続けな」




耳元で低く、重低音真っ直ぐ堕ちて子宮に響く。
頬が熱い。見られた。
命令を大人しく受理して己の手は其処を掻き回す。
彼の手は後ろから、其処を容易く導き出し、中に入り込む。


私の中で縺れ合う彼の指と、私の指。
結ばれることはなく、私の出す蜜に阻まれてそれを許すこともなかった。

私の背骨の彎曲に合わせて胸をくっつけながら、
空いた右手は髪を掻き回し耳に掛かるそれを払った。



「いやらしいな、お前。」



それは悦んでいるの。
蔑んでいるの。

突っ込まれたその中で私の指の股を撫でる。



「どんなこと考えて、触ってた。」


「アンタが・・・・アタシに・・さっ・・きしたことを、思い・・出して。」


切れ切れな声になるのがみっともない。
時折漏れる女の声がイヤだ。



「ひとりで、気持ちいいのか」


アンタのことを考えているから。

声にはならなかった。
只管求める愛欲の渦が、音を立てて私を呑む。



「俺じゃなくっても、よかったか。」


「いや。」

もっと、あんたの手でしてよ。
方法を知らない私を欺くのはもうよして。


「俺のことは。」


「俺のことを、少しは考えたか。」


「早く・・・・、来て・・・・欲し・・・くっ」

もう私の手など意味のないモノになり果てた。
それを見て取ったのか、不気味なほど優しくそれを抜き去る。




「待ってた。」





「今度は、どうして欲しいんだ。」


裸の脚に絡んだ男の脚。
足の裏に感じた触れたブーツの爪先。
背中に実感するその存在。





君の匂いを此処につけてよ
君の噛み痕此処につけてよ
君の匂いで私を満たして


私の匂いを君につけて
私の噛み痕此処につけて
私の匂いで君を満たして


混じり合いながら。






「頂戴」


君はいいよと嗤った。

end


裏800踏まれたそらちさんに捧げます。
テーマは「ゾロの声に縛られるナミ」
ちょっとフェチ入った感じで良いですよね。へへへへ(エロ笑い)
ツーか私もそらちさんも声フェチですから。「あの声」で読んでいただければ幸い(笑)
因みに私の中でssの構想を練るとき彼はあの声で喘いでますよ。
(ネェ、どうしてそう言うことを言っちゃうかなぁ・・・。)
気合い入れて書かせていただいたんですが、ど、どうでやしょ?そらちさん
お目汚しでございました。
*
最近出されるリクだとかなりゾロナミになって、なんだか新鮮vv
(イヤ、本当にゾロナミかは置いといて。)
今度のゾロはちょっと悪党な感じを目指してみたんですけど、どうですか?
ダメですね。(自覚してる辺りがもう・・・)
なんかねぇ、悪い男って感じ。でもアん人ぁ実はいい人だからね。
きっとこういうの向かないね。
でも、自分にだけそう変わってくれるんならまたいいかも知れませんが。
どうにも経験値がまだ微妙なので解りません、と言うことにしておきます。(どっちなの?)

ところで又もや、続きが気になるかと思われますが、これは此処で終わりなの。
「声に縛られる」ところまでがリクエストだから。(喧嘩売ッてるのか、って話ですね。嘘

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