行くべき行方は 知らねども







安 達 ヶ 原





乾いた落ち葉が疲れた足を縺れさせる。
前屈みになって居なければそのまま後ろへ素っ転びそうだ。倒れるわけにはいかないのに。

息が上がる。
口で呼吸しすぎて喉が張り付き痛い。


 藪とまでは行かぬ、けもの道。


陽は入るが真上にあった太陽も半刻もすれば赤く燃えるだろう。
ずっと屈んでいるから腰が痛む。
膝は笑うし腕も痺れている。
よろめくことも出来ないのにそれでも足は前に進む。

 何かを畏れるように。




  どっかで見た景色じゃ




そう坂本は思った。
強烈な既視感は現状を嘲笑う様に背に圧し掛かる。



  なんでワシ、こがあなところで人間担いで歩いちゅうんろうか。



行商人になった覚えはないがやけど、荒く息を吐きながら足を前に出す。
バランスを崩さぬように踏ん張りながら悪態を吐く。
行商だって立派な商いやけどのう、
喋ると苦しいと解っているのに聞き手の曖昧な独り言を吐いた。




貿易商、とは行かぬまでも実家の家業手伝いを一年。
仕入に参加させてもろうて一年。
口だけは一丁前じゃったからゆうて商談交渉させてもろうて半年。
ようよう独り立ちのための資金繰りで「アンタの人柄に掛けましょ」なんてぇ言う酔狂なスポンサーを見つけた意気揚々の帰りと言うのに此の様だ。



  出る出るいっちょったらまっこと出おった。



街道は最近山賊やらが出るから気をつけてと見送りに出てくれた者が言っていたがまさか自分が襲われるとは思わなかった。
幸い何も取られはしなかったし怪我も無かったが街道を外れたのが拙かった。
本来楽天家なので、何らぁなるにかぁーらん等と笑っていたがさて本当か。

歩けども歩けども本筋には戻れず、もう数時間けもの道を歩いている。
腰にぶら下げていた水筒の中身はもう空だ。
水の音もしないし雨の気配も無い、空は高く澄んでいて雲も薄く千切れて流れるばかりだ。



「よぉ、陸奥。生きちゅうか」


汗も出ない。

半刻ほど前に唯一の道連れがぶっ倒れた。
怪我などではない。恐らく脱水症状が原因。
恐らく過労と極度の緊張が引き起こしているのだろう。

気風も威勢も頭も人並み以上。
商売での肝が幾ら据わっていようとまだ年端も無い娘だ。



それに。






  目の前であがなもん見せられてはのう。






ずるり、足底で落ち葉が滑る。忌々しい。
衝撃でずり落ちかけた道連れを掛け声と共に背負いなおす。


「あとはやちっくとやき」


掠れた声が聞こえているかどうかは解らぬ。
いつもの通り悪態でも吐いてくれれば気が紛れるのにさっきからうんとも言わぬ。





   どっかで見た景色じゃ





 枯れ掛けた薄。

 落ち葉に縺れる脚。

 重い背中。

 暮れかけた太陽。


 恐ろしいほどの既視感がすぐそこに居る。
振り返れば掴みかかって殴りつけられるだろう。



思考のループを食い止めるべく、いかんいかんと顔を上げた。

太陽はまだ黄色い。

なんちゃーがやない、まだ昼の域。
あと数時間で里へ降りれば良いだけだ。

足元ばかりを見ていた目線を奮い立たせるように少し上げた瞬間、
思わず笑みが零れた。


「やっぱりワシ、最高の幸運の持ち主じゃ」



遠くで煙る細い煙が見えた。





「もうちょっとやき、待っちょれよ」





       *





空が高いとぼんやり思った。


とんぼが何匹もあちらへ此方へと交差している。
秋だ、秋の夕暮れ間近。
こんな風に空を見上げるなぞ童の頃にしたきりじゃ、そう陸奥は思った。

そういえばこうやって空ばっかり見上げている男がおった。
空想家で虚言癖があって女にだらしなくて、
楽天家で自信家で思い込みと運だけで生きちょるような男だ。
多分今もその辺で暢気に転がっているのだろう。

「おい、辰」

傍にいるはずの男に喋ろうとしたが上手く舌が回らぬ。


おかしいと思ったが最後、どうしたことかその空すらもだんだんと高く高く遠避く。
いや遠ざかるのは自分なのだと漸く解ったとき、視界はいつもの半分以下で狭く窄まっていた。

これはいよいよいかんちや。

ここはどこだと問うも答える者の姿は見えず。
自問するも埒のないばかり。

随分遠くの方で人の話し声。

おぉい陸奥、おぉい陸奥とおらびよる。


  ほがぁにおらばいでも此処におるやか。

  やかましい。



悪態を吐きながら返事をしようとしているのに声は出ない。
腕を振ろうとしてもそれも叶わぬ。
声は遠くなりはじめる。



 見つけられんやったが。



探す声が遠ざかることにかすかな失望を感じ、黒く塗り潰される空を変わらず見た。


 此処に居るぞ。坂本、よう見ぃ。


狭窄した視界に黒い綿のようなものが入ってきた。
まるで春の雷雲のようだ。
さっきまで良く晴れていたのに。




「口に含ませてやれ」




知らぬ声。けれども声は近い。



 誰なが。



冷たい滴が、ほたほたと毀れる。
口唇の極近いところに熱がある。

柔らかな感触。生ぬるい雨。

頬に毀れ、顎を伝う。
口唇を濡らし、乾いた舌を湿らせる。




雨。




 ぬるま湯のような。



水だ。




「水?」




そう気がつき目を開けたときに視野狭窄は治まり、
代わりに極近いところに見知った男の顔があった。
毛糸玉のようなもじゃもじゃの髪の毛でそうと解った。



「坂本」



珍しゅう陰気くさい顔をしおってからに。


えいえい喋るなと椀に入れた白湯を渡される。

自分で飲めるかえ、そう問われた。
頷きながら今自分がその腕に支えられていることに漸く気が付いた。
腕を離れるように起き上がり、受け取ったそれをごくごくと喉を鳴らし飲み切る。
その傍からもっと飲めと並々と注がれた。
普段ならもうえいと言える筈だが身体が乾いて仕様がない。

漸く一心地着いて周りを見れば、坂本と見知らぬ老人のような男が傍に居た。
風体から擦れば隠遁者というところか、
かの傍には掘っ立て小屋に毛が生えた程度の庵のようなものが在る。
炭焼き小屋かと思ったらそうではない。

杣か。

今飲んだ白湯も此の親爺が差し出したものだろう。
礼を言ったがいやいやと手を振るだけでそれ以上を言わせなかった。


「どっから歩いて来んさったか?」


襲われた場所を告げるとあのあたりは出るのうと杣は髭の生えた顎を撫でた。


攘夷戦争後、人々の生活は荒れた。
職を奪われた幕臣たちは天人に戦争を仕掛け、その争乱で田畑は荒れた。
一度は鎮静化したものの、今もあちらこちらで火種は燻っている。

農村も例外ではなかった。
戦争の為の供出をしてしまえば荒れた田畑を抱えて飢え死にするばかりだ。
困窮する生活の中、食うに困り里を捨て多くは江戸へ出稼ぎに出た。
しかし食える者とのそうでない者の差は開く一方で、
落伍者は捨てた里にも戻れず非合法の仕事に就いた者も多いと聞く。


昔に比べてどこも治安が悪くなった。
都市だろうが農村だろうが同じことだ。
ただ近代都市にはギャングが出て、農村には山賊が出る。

その違いだ。
連中もそういう類の者だろうか。


「里に下りるにゃあ、あとなんぼ掛かるかのう」

親爺は、大体朝はよう出て昼過ぎに着くといった。
それでは真夜中の行軍を覚悟せねばなるまい。
また迷う事しきりである。


今宵の宿を坂本が頼むと杣は渋り顔をした。


「こん小屋は手狭じゃし、ワシが一人しか寝る場所がないしの」

少し開いた戸口から小屋の中が見て取れた。
土間とのすぐ向こうは寝間というような作りだった。
そこかしこに鉈で割った木が積まれており、土間には沢山の木屑が散らばっていた。
木工か何かをしているのだろうか。
寝間の奥に何か像のようなものがある。

 仏像、か。

弱ったのうと坂本はもじゃもじゃの髪の毛を掻いた。
野宿は出来ぬ事もないが、それにはちと厳しい季節だ。雪は降らねども山の風は冷たい。
じき日も暮れる。

「八方塞じゃのう」

日が暮れる前に里へ下るのは不可能だという。
街道へ出るには此処からさらに半日は歩かねばならぬ。

というのに参った参ったあっはっはと笑い飛ばす。

親爺は少し考えた後、雨風だけ凌げればええかと尋ね、
迷うことなくある頷いた二人に一方を指した。




     *




また山の中だ。
今度は下りで逆に足が笑うと坂本は一人やかましく笑った。


親爺の話はこうだ。


少し下れば廃村が在る。
雨風は凌げるだけの小屋は在るし、まだ井戸も枯れていないだろうといった。
泊めてやれぬ代わりにと雑穀の混じった握り飯と干芋と干物を呉れた。
どうして廃村になったがかぇ、と坂本は問うたが親爺はそれには答えず行けば判るとだけ言った。

そう時間はかからぬといったがさっきまで脱水症状だった陸奥には少々応える行進だ。

頭痛が酷い。

冷や汗は止まったが歩くたびにこめかみの血管が脈打つのが判る。
しかし、と陸奥は歯を喰い縛る。


 こん男はあしを背負って山道を歩いた。


同じように歩いて同じものを食っているのだ。
お互い心身の疲労は同じ筈だ。
自分だけが弱音などを吐くわけにはいかん。

坂本は変わらずそろそろ着かんかのうなどと暢気に歩いている。
黙ったまま、その後ろを歩く陸奥に時折視線を遣りながら。
鼻歌交じりに小枝を拾い、宿があってよかったのうあっはっはと返事をしないことを知っていて言う。

こういうところが気に障る。

苦しい筈なのにそれを一言も口には出さぬ。
此方は腹の中でぐだぐだ文句を言っているのに。


 あァ、癪だ。



その時ぱっと視界が開けた。
山を抜けたのだと判った。
目の前に暮れかかる茜色の空と親爺の言っていたものが見えた。






「陸奥、着いたぜよ」



 ここが。




「今宵の宿じゃ」






        *








どこにでもある寒村という風だった。
山道を抜け、村の中心へと続く畔道を歩く。
方々に広がっていたはずの田畑は荒れ耕すものが居ないことを教えた。

元々小さな村なのだろう。
集落は然程大きくはない。

人間の居ない家々というのはどうしてこうも不気味なのか。

寄り添うように建てられた家々の中には屋根の落ちているものもある。
落ちた藁葺から野花が咲き、それも枯れていた。
軒先に置かれた大小の籠はもはや原形をとどめておらず、枯れ草の吹き溜まりになっている。
雨戸は外れ、障子は破れ果て、折れた残骸が木っ端になって、ぶら下がるように戸についている。


道のあちこちに転がった鋤や鍬。
欠けた碗、朽ちた筵。
そして。

農村には不似合いな代物がいくつか二人の言葉を失わせた。


 刀。


折れ曲がっているものや刀身半ばから折れ二つになっているものもある。
何れも錆び、鈍銀色だったそいつは赤茶けた鉄屑になっていた。
それから、具足らしき残骸。
旗竿だったらしき代物は縦に罅割れ竹の繊維が箒のようにささくれていた。
先端についていたと思しき旗は、雨風に裂け泥に汚れ、元が何色だったかも解らない。





「坂本、こりゃぁ」


陸奥がなにかに気が付いたように小さく言う。
坂本はそれでも歩みを止めずその光景を横目で眺めた。
二人の土を蹴る音だけが廃墟に聞こえる。
陸奥はそれ以上何も言わず後ろを歩いた。


その内屋根の落ちていない家を見つけた。
どうやらその村の主か何かで他の家よりも少し大きな作りだった。
家の周りには朽ちてはいるが垣があり、
牛馬を繋いでいたと思しき小屋に、納屋と思われる建物が隣接していた。
不似合いなほどに楓の木だけが赤々としていて、場違いともいえるほど紅葉して美しい。

坂本はごめんくださいとバカ正直に挨拶した。
無論返事が返るわけはない。
がらんどうの家に暢気な声だけが響いた。

恐らく此処は台所の成れの果て。
土間から続く板間の此処で人があったときには下働き者者が飯を食い主の賄をしていたのだろう。
囲炉裏もあるし、座も抜けていない。
一夜の宿としては上々である。

「此処に、しようかのう」

連れに断ることもなくそう言い、
ずかずかと土間へ入り、上がり框に杣の親爺から貰った食べ物を置いた。

陸奥はあたりを少し見渡し、少し遅れて入った。
被っていた笠の紐を解き、坂本の隣に腰を降ろす。
頭痛はいっそう酷くなり、倒れるほどではないがまた冷や汗が出そうな予兆がした。

坐ったが最後だ。


「済まんが坂本、あしは」

後ろに反っくり返りそうになるのを堪えつつ話しかける。
喋る振動ですら痺れるようだ。
それを知っているのかいないのか坂本はすっと立ち上がった。
腰にぶら下げた水筒を置き、護身用の銃を懐から出して陸奥の手に握らせた。

「井戸を見てくるき」

そう言って今来た扉から出た。
陸奥はその後姿を確認した後、倒れるように砂埃だらけの板間に突っ伏した。






      *






夕日が赤い。

どこで見る夕日もこんな風に赤い。
どうして同じものを見ているはずなのにこんな風に色が変わるのか、不思議で仕様がない。
昔の友は、死んだ人間の流した血の分だけ赤くなるのだと一つしかない目を眇めて言った。
そうかも知れんのうと言ったが今はそんな感傷は起きない。

日が昇って、落ちて月日を重ねても。
太陽の周りを幾ら回っても、時間は戻らないし過去に旅することは出来ない。
人間は想像の中でしか過去へ行くことしかできない。

明日を生きねばならない。
それは誰しも、根底に「死にたくない」と思っているからだ。
無論、自分も。


杣の親爺は言った。
廃村の理由を聞くと「行けば分かる」とだけ言った。



錆びた刀、折れた旗竿、朽ちた御旗。
焼き討ちされ掛けた焦げかけた家、あちこちに残る狼藉の跡。
ただし死体はない。



「成る程のう」




井戸を探すついでにまだ見ていない方を一回りした。
相変わらず人の気配は無かったが、
今宵の宿から少し下った所から見えた荒野に無数の墓らしきものが見えた。
理解した。


「こりゃァ山賊は出んでも」


何処かで見た景色だ。

夕焼け、秋の風、たった一人見下ろす荒野の向こう。
けぶり立つ戦場、人だったものの群れ、夢の跡。

小さく舌打ちし、頭を掻きつつ踵を返す。


「亡霊でも出そうじゃのう」











      *






恐ろしいものは、もう見た。





山賊、というものを初めて見た。


三人位居ただろうか。
案外と少ないものだなぁとか、あァこんな形でこういう風に出て来るのかと妙に冷静だったのを覚えている。
だが同時に出くわした事のなかったのは、其奴等のぎらついた獣の目だった。

金を出せ、身包み置いていけ、というなんの捻りのない文句よりも、
言葉の通じない獣めいた血走った目と連中から漂う垢染みた悪臭、
それから現実問題として抜き身の人斬り包丁(ただし其れはもう曇っていた)、
物を取られるのか、命を盗られるのか。


 兎も角「何か」を暴力で奪われる事への不安がすぐそこにあった。







私は丸腰だった。

いや、正確には坂本がくれた拳銃を懐に持っていた。

そいつをどこから手に入れたものかは知らないが、
奴が此の旅へ行く前に護身用じゃと陸奥に渡したものであった。

一度なり撃たせてもらったが、撃った時の強い反動で目標などを狙える筈もないものだった。
何の役に立つのかと聞けば、脅しじゃ脅しと言っていたが使う機会なぞ無く、
ただ重いその塊なぞその辺にうっちゃって置いても良かろうとさえ思わせた。

こんなところで必要になろうとは。
しかしながら其れを抜くことを忘れていた。
懐に在ると気が付いたのは事が殆ど済んでからである。


坂本は初め逃げ腰だった。
いつもどおりへらへらと笑いながら、ほがなもんを振り回してどうするというがかぇ、などと笑った。
いや、あんなときに笑えると言うことは今思えばそうではなかったのかも知れぬ。


言葉の通じぬ相手に何を笑っているのだと少し苛だったが、
どういうわけか連中と自分の間にいつの間にか入り込んでいたので、
視界には坂本の背中しか見えなかった。

その時、坂本の左手が合図するように後ろへ下がれとでも言うように振られたのを見た。
下がって居れということなのか、其れとも逃げろということなのか判じかねたが、
此処でやいのやいのと言っても埒は明かぬ。

じりり、砂利を踏むように半歩後退しようとしたとき、
三人のうちの一人が雄叫びを上げた。

問答無用といったのか咆哮なのかは分からぬ。
もうその時には自分は背を向けていたからだ。
何が起こったのか正確には判断しかねた。

二人が坂本に斬りかかり、一人が私を追ったのだろう。
気が付いたときには後ろで括った髪の毛を引っ張られていた。
痛いと思って振り返った矢先、まるでバネが切れた発条細工の玩具のように、
今まで髪を掴んでいた手が急に力を失う。
その反動で地面に突んのめった。
状況を把握しようと急いで顔を上げると、空に何かが舞っていた。



そいつは。





私の一房の髪の毛と、






人間の指だった。








余り血は出ていなかった。
まるで小石でも弾き飛ばすような軽やかな動き。
赤い襟巻きが目の前を掠め、通り過ぎる。




一拍置いてものすごい呻き声が上がる。
斬られたかと呼びかけようにも上手く声が出ない。
地面に転がる二本の指。
小さな音を立てた。




 誰が斬られて、


 誰が斬ったのか、


 そして次は誰なのか。




目の前に天を衝くような大男が立った。
斬られるのか、それとも首を刎ねられる前に何かされるか。
男は背をこちらに向けていた。
太陽が真上にあるから濃い影の中に顔がある。


その背の主が坂本だということに一秒かかった。

そして今しがたその指を刎ねたのが誰なのかも。



 言わなくとも判った。






「去ね」




威嚇を籠めて殊更低い声が唸る。




「命まではとろうと思うちょらんき」





 おんしは誰じゃ。
 あしが知っちゅう男なが。






いつもの暢気な声ではなかった。
初めて聞く精悍な声だった。
夢想家でも虚言家でもなくあれは。




 あれは。




 恐らく。










「陸奥、メシじゃ」


突然肩を叩かれた。
目を開けると朽ち掛けた天井があった。
そして見慣れた男の顔が十センチと離れぬところにあった。

眼が悪いのか何なのか、こいつはすぐ人の傍に寄りたがる。
それが昔から少し苦手だった。

「近いがやき」

傍に寄った肩を押しのけ、起き上がろうとするが未だ頭が痛む。
手を着きようよう身体を起こして見渡す、部屋の中が随分明るかった。
囲炉裏で火を焚いている所為だと判った。

いつの間にか着ていたマントのボタンは外され衿も少し緩められていた。

喉が渇く。

それを察したのか。
どこから拾ってきたものか欠けた椀に白湯を差し出され、それを大人しく飲み干した。


「食わんか?」



杣の親爺に貰った握り飯を差し出された。
食わねば明日は歩けまい。
食欲なぞとんと無かったが、一口齧った。





ぱちと薪の爆ぜる音。
破れ障子、歪んだ桟。風が甘く叩く度にカタカタと鳴る。

坂本は一人で何事かくっちゃべっていた。

一人で喋って一人で納得して一人で騒いで、
相手をして貰えなければ、つれんのうなどを言いながら大笑いしてどうでもいい事を更に喋り始める。
陸奥がその垂れ流しの大話に付き合うことは滅多に無い。


 だが坂本はお構いなしにひっきりなしに喋る。


里に下りたら食べたいものやら、随分と寒い季節になっただの、どうでもいい噂話に法螺。
陸奥が握り飯をひとつ食べている間それは続いた。
もう慣れっこだが、今日はちと違う。



「辰」


白湯を椀に入れ陸奥は一人で話していた辰馬に向き直った。



「こん村は、なんなが」




年がら年中締まりの無い顔からすぅと笑みが消えた。

恐らくそれに自分でも気がついたのか、再び表情を取り繕う。
だがそれはお世辞にも上手くはなく、それを知ってか知らずか視線を逸らした。





 多分。



 同じ事を、考えている。







「恐らく」


知っていることを確信に変えるために聞いた。
何かを暴こうと思ったわけでは、決して無い。
だが、それとこれとは同じことだったのだと同時に思う。



「攘夷志士の敗走兵の仕業ろう」



珍しく静かな辰馬の声が二人しか居ない家に響く。
辰馬は目を細めて橙色の炎を見た。
その中に、何かが見えるわけでもないだろうに。


 あぁ、やっぱりそうか。

来る途中の村の惨状を思い出す。
折れた刀、旗竿の残骸、朽ちた旗。
あれは恐らく散発する志士たちの御旗のひとつだった。


「下関やらは酷い有様じゃったゆうき」


部隊をはぐれたか壊滅したか、
散り散りになって逃げて敗残兵狩りから逃げおおせ此処まで来た。


先の不安と死の恐怖。
敗北心と飢えが心身ともに疲弊させる。


「そのうち考え始めるがやき」


どうしてこがなことになったがろう。
何の為にいま自分はここにおるんろう。



腹もすいた。

裏切られた。

誰の為の戦いなのか、何の為の戦いなのかも分からない。

行き場を無くし、追われ追われて山ん中。


「初めに何を思うて戦に行ったのか。なぁんも判かりゃーせんようになるがじゃ」



 背負った戦友だった奴が死体になる。
 下ろしたところで墓を作る気力も無い。



 はじめは錦の御旗の元にと意気揚々だった奴らの成れの果て。
 鬱憤は腹に溜まっても満たしてはくれぬ。


「人斬り包丁ぶら下げて、半分方死人みたいな奴等じゃ」


 飯を頼んで蔑ろにされたか、或いはもう見境なく。



「わかるろう、畜生働きじゃ」



炎を見ていた目を閉じ、眉間を掌で擦った。
火の香を吸い込むように、深く息をついた。



「山賊になったか、獣になったか。或いはもう土の下に、」










「やめとおせ」







背中が薄ら寒い。

指が握り飯に食い込むのを必死で抑えた。
ぎりぎり奥歯を噛んで、聞こえぬように深呼吸した。
制した後、少し歪になったそれを無言で口の中に押し込む。
無理やりに咀嚼し、白湯をもう一杯欠けた椀に注ぎ、
今しがた喉元までこみ上げた言葉とともに飲み下す。




「まぁ、愉快な話じゃーないがやき」



それきり辰馬は黙り、薪をくべようと鉈を探しに外にでた。







      *







「火を落すぞ」


飯も食えばやることも無い。
明日早くに起きて里まで下らねばならぬ。
半日の行軍か、と陸奥は寝転びながら考えた。
頭痛はもう殆ど治まっている。ただ頭を動かすとまた痛み出しそうな気はするが。

「あぁ」

辰馬が灰を掛けると火が消えた。
囲炉裏の灯りに目が慣れていた所為か、急に暗くなった気がした。
しかし、その闇に目が慣れると破れ障子から外の月が透けて見えた。

月明かりが随分眩しい。



 青白い外、底冷えのする夜。



映ろう光から逃げるように目を閉じる。







途端、昼の情景がまざまざと甦った。
光る小太刀、翻る赤い襟巻き、斬りおとされた人の指。


 そして、声。






腐っても、北斗一刀流免許皆伝か。


竹刀を振り回しても人を斬るには腕より度胸と聞いたことがある。
人間は案外硬い。
脂肪と筋肉、その内側には骨がある。
刃は人間の肉の弾力でまず跳ね返される。

何より人を殺す、傷つけることへの畏れが心にストップをかける。
心が止まると身体も止まる。
ブレが生じる。




 だが、あれはそんな感じではなかった。




戦でどれほど人を斬ったか知らん。

そんな話をしてくれたことは無い。

逆に此方も聞かなかった。

知りとうもなかった。







初めて見た。
人間が人間を斬るところを。







  あの男が。



  辰馬が。



  剣を振るうところを。






「早う行くぞ、新手が来るかもしれん」

声を掛けられても恐ろしゅうて。

急き立てられるように言われ足早にけもの道を分け入る。
背を追うが、さっきのショックとそれを逃れた安堵とが綯い交ぜで、
冷や汗ばかりが吹き出た。

けれど恐れているとは死んでも知られたくない。
こんな些細な荒事を恐れるような人間とは思われたくない。
何より辰馬自身を恐れているなどと知られるなど言語道断。


しかし身体は正直で。


足は震え、息は上手く吸えず、
冷や汗を絶えず掻き、こめかみが脈打ち、網膜には斑点が明滅した。


気がついたら辰馬に背負われ、山道を歩いていた。
もう手には剣など持っていなかった。
小太刀はもう鞘に収まり、両手は私を背負う為に使われていた。

もうその時には、能天気でお気楽で呆れるほどの楽天家に戻っていて、
背負われている間、ずっと私を励まし続けた。



どちらが本当で、
どちらが嘘でなどとは言わぬ。

見たことのあるものと、
そうではないもの。





 正義の反意語は「悪」ではなく、もう「ひとつの正義」が正しいのと同じように。





目を開け囲炉裏を挟んだところに居る辰馬を見た。
同じように寝転がって天井を見ている。
眠っているのか、起きているのかは判らない。






「辰」



 翻った赤い襟巻きがまるで血飛沫に見えた。
 
 私の手を引きひた走る背を畏れた。




「人を斬るのはもうやめとおせ」




 死んだらどうすると思ったのは私なのか、お前なのか。

 自分が死ぬことが恐ろしいのか、お前を失う世界が恐ろしいのか。




「あしはおんしが斬られゆうところを見とうないき」





  多分、どちらも。






辰馬は囲炉裏の向こう側に居て今しがた言ったことなぞ聞いていないように一度瞬きをした。
要らん世話やか、そういわれてもおかしくはない。
その時微かな衣擦れの音がして、視線を感じた。
身体を動かさず顔だけをそちらに向ける。
細い月光に踊る細かな灰があちらこちらから静かに舞う。



「ほうじゃの」



辰馬は片手枕で此方を向いて、酷くゆっくりと瞬きをした。
癖毛を煩わしそうに少し後ろへ流しじっと此方を見ていた。
破れ障子から入る細い光がその傍を通ってその顔がよく見える。


「陸奥が言うなら、そうしようかの」


怒ってもいなければ悲しげでもない。
いい思い付きを褒めるときの顔で、頷いて見せた。
普段通りの少々締まりのない顔で、そうしょう、そうしょうと言った。


余りにいつも通りだったので此処があばら家で明日も強行軍で歩かねばならぬことを一瞬忘れた。
まるで里におるみたいじゃ、そう陸奥はおもう。
背は板間で痛いし酷く寒い。
しかし普遍とも思える郷愁のような、それを醸す者が道連れでよかった。


辰馬は随分穏やかに笑っており、それに安心した。
そのなんでもないいつもの能天気な笑い顔が枕元の銃より何より頼もしいとさえ思う。

同時に此方を見る目は何か愛いものでも見るかのようで、妙に気恥ずかしくてまた天井へ向き直る。
そうだ、もうひとつ言っていない事がある。




「それからの」

面と向かうと恥ずかしい。
思いついたけれどなんと言おうか。
普段はこんなことは絶対に言うことができぬ。


「なんじゃ」



ただ、これを言わねば礼に悖る。





 「背負うてくれて、ありがと」




思いの外小声になったが、周りは静かで、がらんどうの家に反響した。
照れているのを自覚した後、それを茶化されるのが厭でそそくさと背を向けお休みと外套を肩に掛け直す。
辰馬は暫く黙ったあと、なんだ、ほがなこらぁと笑った。


「なぁに、陸奥なんぞ小まいきに」


辰馬は両腕を頭の後ろで組み、背を向けた陸奥を見る。

確かに小さい。

横に並んでいるときや、頭を突き合わせて仕事の話をしているとき、
普段はそうも思わないが、確かに今日倒れた陸奥を背負う時に思うた。


 こがぁに小さかったろうか。


酷く軽々として、担ぎ上げるのも苦はなかった。

 しかし。

腕も足も自分のよりもずっと華奢で細いのに、
同じ道程を同じ速さで歩いてきたのかと思うとその強靭さに感服もした。


 流石ワシの見込んだ女なが。


選んだ相棒が確かだったことを誇らしく思った。
だが、そう思うのと同時にどうあっても埋められぬものがあるのだと思う。
性差は勿論だが、もっと他にも。


 刀を捨てろという。


理由は尤もらしいものだった。



 斬られるところを見たくない、か。



では斬るところはいいのかと問えば違うというだろうか。
人を傷つけ傷つけられる戦場に嫌気がさしたのは随分と昔のような気がする。
だが、それは高々三年前の事だ。


あの時、沸騰する血の音を聞いた。

陸奥に伸びた腕ごと斬り落としてやろうかと思った。
気がつけば小太刀は抜かれ、一閃、刃を振り下ろしていた。


 傷つける事を厭うのに、なぜなのか。



理由は判ってるがあえてそれは口にしなかった。

 自分も、陸奥も。

誤魔化した。上手く隠し果せると互いに甘く思う。
だから多分、これから二度とこの事は口にしないだろう。
予感というよりそれは確信に近い。


外で虫の音がする。
随分近く、押し迫るような声。


それが少し責められているようで恐ろしい。




「真冬じゃのうてよかったのう」


陸奥の肩が声に反応した。
まだ眠っていない。
疲れているのだから早く眠ればいいのに。
そう思いながら夜の長さを同じくする道連れを見た。

「寒いのう、おんしは?」

陸奥はちょっと間を置き、少しだけ掠れた声で、
隙間風が酷いがやきと外套の中に足を窄めた。

寒さも、夜の深さも、恐ろしいものも。
同時に共有する互いにたった一人の相手。


「よし、風除けになっちゃる」

辰馬は勢いよく立ち上がる。
ぎょっとした陸奥は同じく振り返った。

「近寄るな毛玉」

陸奥の隣にお構いなしと滑り込み、隙間風の吹き込む方向に背を向けた。
丁度向かい合うようにあっはっはと笑いながらまぁまぁと宥めた。

「なにがじゃ、冬山では裸になって暖めあうらしいき」

片手枕で頭ひとつ上から覗き込まれ陸奥はむぅと唸る。
その距離は抱き合うには遠く、話をするには近すぎる。
空気越しの温度はただ少しだけ暖められ、互いの匂いと埃っぽさと秋の夜の香が漂うばかり。

少し苦い顔をしている陸奥。
少しだけ楽しそうな顔をするのは辰馬。



「下心が丸見えじゃ」

「なんの、おんしごとき」



 腕を伸ばせば届く。

 けれども伸ばしてはならぬ。


同時に目を閉じ、互いの姿を視界から消す。
感ぜられるのは気配と呼吸。
ただそれだけで只管の安堵で満たされる。

 矛盾している。

だがその矛盾こそが我々なのだと互いに強く信じている。



「明日は早うおきねばの」

「よばれしなや、辰」


あほうゆうなと今宵最後の台詞を吐いた。







      *







山の端が金色に縁取られている。
木立を柔らかな靄が覆い、虫の音と鳥の声が同時にする。
それらが夜から朝へと時間を塗り変えてゆく。

陸奥は黒ずんだ櫛で髪を梳かした後、井戸へと歩き顔を洗った。
頭はすっきりとしている。頭痛ももうしない。

夜の明ける瞬間を見ながら伸びをした。

辰馬はまだ寝入っている。

寝相が悪く今朝起きたら羽交い絞めにされていた。
脚は絡まり抱き潰すようにして覆い被られていた。
息苦しさに目を覚ましたので少々寝覚めは悪かったが、
しかしそれで寒くはなかったのだと思うとまぁこのことで文句を言うのは止そうと決めた。

恐らく未だ起きはせぬ。
寝汚い男なのである。

昨日の礼とばかりに着ていた外套を掛けて遣り、そのまま外へ出る。

一夜の宿から廃墟を抜け、昨日は見る事すら叶わなかった村を歩く。
朝の清冽な空気に薄気味悪さは半減していた。
こうしてみればまだ寝静まる村のようにも見える。

少し歩けば村外れに着いた。
そこは荒野で枯れ草が腰の高さまである。だが、どういうわけか一筋踏み分けられた後がある。
けもの道ほど細くはなく、自分も別け入れるだけの幅。
不思議に思って夜露に爪先を濡らしながら歩くとその理由が判った。

無数の墓が刈られた草原の中にあった。
墓石もそれぞれ歪で小さいものや大きいもの。
朽ち掛け黒ずんだ木仏が寄り添うている。


カサと枯れ草の擦れる音がした。
驚き振り返ると昨日の杣がすぐ其処に居た。
頬かむりをしていたのですぐには判らず気が付くのに一秒掛かった。


「昨日の」

「よう眠れたか」


親爺はそう言った。



「出んかったか」
「なにがじゃ」



「いや、なにも」

親爺は手に持っていた包みを無造作に渡すと、
メシだ、くろうてくれとだけ言い巻いていた手ぬぐいを取った。
無数の墓の前に膝を着き、手を合わせ目を閉じた。

縁の者でも眠っているのか。
それとも、今自分が考えている通りの者だろうか。

頭を垂れた背を見ながらそうでないことを祈る。

同時に枯れ草を無遠慮に薙ぎ倒しながらおぉいと叫ぶ男が来た。
寝ても覚めても煩い奴じゃと、音のするほうを見る。



「むーつー、一人で閨を離れるのは反則じゃき」


朝っぱらから暑苦しい男が、同じように暑苦しい頭をゆらゆらとさせながらこちらへ歩いてくる。
長身の為、その姿が良く見えた。手にはさっき掛けてやった外套がありそれを大仰に振って見せた。


「さみしゅうて探してしもうたぜよ」



要らん事を、と陸奥は頭を抱えた。

親爺は立ち上がり様、陸奥の顔と坂本の顔をちらと一瞥し、
ああと目を伏せるように頷いた。
どう考えても要らぬ誤解を与えているに違いない。
しかし誤解を解いたとてせん無きことだ。

妙な空気の流れを変えようと今しがた貰った包みを掲げて飯の礼を言えと促した。


「おぉ、すまんのう」


大袈裟に喜ぶのは坂本の専売特許である。
ただ本人は本当に喜んでいるので大袈裟というにはちと違うが。
杣は、なんも出来んですまんとだけ言って顔の前で手をひらりと振った。

「墓参りなが?」

坂本は碑を見ながら尋ねた。
杣はあぁとだけ言い、並ぶそれらを同じように眺める。
虫の声と風の音が三者の間を流れた。
坂本は神妙な顔で立ったまま手を合わせ、少し遅れて陸奥もそれに倣った。
黙祷のあと、目を開けた瞬間その端に眩しい光が入り込む。

「夜が明けるの」


太陽が昇り始めた。山の際を一際明るく黄金色に染め、姿を一気に現す。
頬に当たる太陽の暖かさが滲みるようだ。
その眩しさに皆が同じように目を細める。


 夜を淘汰した、目が潰れるほど眩い朝。


其処には夜の恐ろしさもなまめきもなく、
ただ今日が始まるのだと言う事だけがひたすらはっきりとしていた。


夜を過ぎれば朝。
何が起こっても、誰がどうなろうと。


 世界の法則は無情に続く。







「ほや世話になったが」


親爺にこの先の道を聞き太陽を背負いほいじゃぁのうと手を振った。
軽やかに踵を返し来た道を戻る。
陸奥は少し頭を下げその背を追った。




坂本は持っていた外套を陸奥に投げて寄越した。
それを羽織りながら隣に並ぶ。
荒野を抜け一夜宿までの道すがら辰馬がぽつりと言った。


「あん男、この辺の人間じゃないがよう」



 下駄の音がからころと暢気に鳴る。


「元は武家、かの」


 頭ひとつ上で呟く。


「どうろう、わからん」



靄は太陽がゆっくりと連れて逃げる。
湿った風が温まり乾き始めた。




「あん仏さん」





「いいや、なんでもないちや」





辰馬はそうとだけ言って、一瞬だけ振り返る。

眩しいような、何か苦いものを見るような。

何に目を眇めたかは陸奥には判らない。

ひと言、何をか言おうと口唇が動いたが、それは聞こえぬままだった。


陸奥はその横顔を見た。
けれどもすぐに目を逸らし支度をするために急ぐ。

「坂本」

前を向いたまま名を呼び急かす。
すぐにまた暢気な下駄の足音がついてきて隣に並ぶ。





「さて、今日こそは綿の布団で寝ちゃる。背中がいとうてたまらんぜよ」
「ほうなが」


 太陽が夜を洗い流す。




「今夜も一緒に寝ちゃろうか」
「あほをゆうがやない」






 今日が始まった。









end


初の坂陸奥。陸奥と坂本のある一夜。
恐らく快援隊設立前夜。

テーマは能の演目でもある「安達が原」

<安達が原のあらすじ>
人食い婆が出るという荒れ野で道に迷った坊さんが一夜の宿を一軒だけ見つけた家の老婆に求める。
老婆は承知し坊さんをたいそうもてなしたが、ちょっと出てくるといって外へ出ようとするが、
自分が居ない間は奥の部屋は見てはいけないという。
寝間でとっちらかっているからと言われたが坊さんは老婆の居ない隙に覗いてしまった。
見れば人間の手足が散乱しており、噂の人食い婆の家だと知り坊さんは逃げ出す。
老婆は追いかけるが坊さんは夜明けまで念仏を唱え続けて人食い婆は退散するというお話。

見てはいけないものを見てしまう典型的な昔話。
隠されたところを見たいと思うのは人間の性。

人食い老婆は昔の辰馬で覗きたくないのに見えてしまったのが陸奥、
そして過去の亡霊を見る自分自身。

まぁそんな感じで書きました。

あとウチの坂陸奥は微妙な距離感とかを出して行きたい所存。

此の二人は傍に居過ぎて見えないとか触れないとか、
そういうのに萌えそうなのでというか私が萌えているので
「添い寝は出来ますが襲えません」 というカンジ。
でも別次元で坂本がSなお話も書きたい。

陸奥、あの若さでNO.2ということは、
海援隊設立当初メンバーであろうと思うので資金繰りも一緒に行くと思われ。
というかまだメンバー自体二人きりっぽいな…。

因みに坂陸奥に嵌って一月、土佐弁を独学する事2ヶ月。
用例集と翻訳ソフトで四苦八苦。所々怪しいのはご愛嬌。

 妄想の中の設定としては…

多分、辰馬はボンボンという話なのできっと実家はお金持ちだが一応独立心はありそうなので、
起業資金の一部は出して貰うであろうがそれでも足りない分は自力で捻出っぽいなぁと思いつつ。
何しろ艦を買わねばならんし。

あと陸奥は私の妄想の中では坂本の家とかで元は働いてたとかだったらいのに
などと妄想しているのでその妄想をいつか書かねばなるまいと思っていたり。

空知さんが坂陸奥編書いたら下ろさねばなるまい。


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