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「個人授業」
沖田くんと神楽ちゃん



いいか神楽、と銀時は言った。
あのどS王子と仲良くしてもいいけど、
優しくされたら気をつけるんだぞとまるで今は不在の父のように言った。
わかったアルよといったけれども銀時は聞かない。
いいや、お前はわかってないよ、神楽ちゃん、猶も続けて銀時は言う。

「いい事教えてやろうかって言われてもついてっちゃァ駄目だからな」

わかったアルわかったアル、煩いなァと神楽は手を振る。
いってきまァすと玄関のドアを閉める。

「…新八、オレって過保護」

新八はすべての遣り取りを聞きながら、うーんと笑った。

「まぁ、大事な預かりものですからね」

銀時は神楽が駆けて行った通りを眺める。
姿はもう見えない。


神楽は今日までに通算百を超える決闘をしてきた相手の男に銀時の言葉を告げた。
百三十五戦百三十五引き分け。
一度はマウントポジションを取って勝利したが、
あれは足の骨が折られた折のことだったのでノーカウントであるとの主張に押されそれは合意した。
今日で百三十六戦百三十六引き分け。記録は更新された。

「旦那が、なんだってェ」

総悟はぜいぜいと肩で息を吐きながら、自動販売機の前に立ち小銭入れを取り出した。
百円玉を二枚入れてからボタンを押す。
押そうとする前に、横から手が伸びた。
缶入り汁粉が飛び出した。
あ、テメェ、と総悟は手を伸ばす。

「油断するからアルよ」

神楽は缶入りしるこのプルトップを引き上げて、汁粉を一気に飲み干した。
まるで旦那だ、総悟は諦念してもうひとつ百円玉を入れた。
今度はお茶のボタンを素早く押した。

「だから、いいこと教えてやるって言われても、ついて行ったり目を閉じたりしちゃ駄目だって」

へぇぇ、と総悟もプルトップを引き起こす。
渇いた喉に冷たいお茶が流れ込む。
こりゃァ、下手な真似はできねェやと、それでねと話を続ける神楽を見ながらそう思った。

end


WRITE /2008.11
神楽ちゃんと総悟は周りが見てないところで時々けんかが終わったあと何気なく喋ってたらいいのに。
ほんのりとした沖田くんと神楽ちゃんの話が好物です。
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