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「EUPHORIA」
土方さんとミツバさん






すげぇ、リアルだった。



痩せていて、恥ずかしいのだと、俯いた。
別に、痩せていようと肥っていようとかまわねぇよ、
そんなことを言った。


女は酷く痩せていた。
腕などほとんど骨の重みだった。
尖った関節が畳まれて腕の中に来た。
少し乾いていた。肌も乾いていた。
日焼けもしていなかった。
青白くて血管が見えた。

抱いたらほんとに折れそうだった。
着物をぬぎたがらない気持ちが分かった。
歳月がそうさせたのか病がそうさせたのかあるいはそのどちらもなのか。

軽くて、乾いていて、温度も分からなくて。
けれどその髪の匂いだけが甘くて、人でなしのおれを静かに呼んだ。


すげぇ、リアルだった。

手首が。
すごく細くて親指と、人差し指で作った輪に余るくらいだった。
首も。
青白い皮膚の下にうっすらと透けた血管が見えた。

着物を解いた時に襦袢の下は本当に痩せていて、
触ったら肋骨が指の腹にわかって、酷く泣きたい気持ちになった。



口唇だけがとてもやわらかくて、温度があった。
目を閉じたときの睫毛で影が出来てた。
それが頬の上に少し掛かるくらいに。



一遍も。

抱いてもねぇのに。

手も握ったことも、ねぇのに。








やらしいゆめだった。
きもちがよくてあたたかくてあのこを抱いて寝ている夢だった。
目が覚めたら掛蒲団を抱いて寝ていて、やわらけぇはずだと思った。


捏造される心が浅ましくて情けなくて。
それでも会いたかったのだとは口に出せぬ。
病の匂いと、女の髪の匂い。


どこで何を思い出したのか。
歩む人々の群れの中で同じ馨に出会ったのか。
今は夜と煙草の残り香だけだ。
障子に雪の影が映った。



冷たい冬の夜だ。




end


WRITE / 2008 .4 .11
一人トシミツ祭りだったんで…。
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