渓谷 を 走る 馬車馬 目隠し された 臆病 な 生き物
朝焼け を 知らぬ 愚か者 洛陽 を 知らぬ 王国
月 を 見たことのない 番人

遮断機 警告音 夕暮れの永遠
交差点 明滅信号 青から黄色 赤は紫
彼ハ誰 の ひとつ刻


誰  どうして  なぜ


疑問符 回答 途切れ て 消える
言葉  は  廻り めぐり て 抱擁 は いつ か
あなた  わたし 世界 は  それ だけ


「尋ねた 問ひ に 答えは 要らない」


もう 少し 待って る こ の手 が 届く ま で 


だから い  らな い 今は  いら   な  い


「この手が届いたら」


「君の髪の毛に 触れることが出来たら」








「 返 事 は い ら な い 」







「はじめてください」


妙に格式ばった聞きなれた声が隣でした。
声の主は家庭教師。
手にはストップウォッチ代わりの携帯電話が握られている。
入試までの秒読み段階でナミはゾロに過去問すべてをタイムアップ形式で解かせている。
内容はどれもゾロにとって難しいものではない。
基準値以上の成績を取っているし、合格安全圏だと確信している。

ただ、問題が解けるからと言って制限時間内に沢山の問題の中からセレクトしてある試験問題を瞬時にどういう問題か判断して解答すると言う訓練は必要だ。だからこれは当日の予行演習の一環。
緊張のあまり出来る問題も出来なかったと言う事態が起こらないとも限らない。



と、言っても。



このクソ生意気な少年が緊張するなんてことはないだろうとも思う。
物怖じしない性格に付け加えて家庭教師を小バカにしきった態度がそれを物語っている。
これはポーズ。
きちんと仕事をしていますというパフォーマンスだ。

その私の為のパフォーマンスに今日は特別に時間を多く貰って彼に入試日程通りのテストを受けてもらうことにした。しかし、今日日の小学生は大変だ。

しかし吾が為のパフォーマンスだとか嘯いたところでゾロが問題を解いている間ナミは実はすることがない。
一生懸命勉強している隣でファッション雑誌を広げるわけには行かないし、覗き込んで“その解き方間違っている”とは口出しできない。はっきり言うなれば、退屈である。

ゾロの視界に入らないようにナミは少し後ろに下がって時計を見ていた。
秒針が規則ただしく動く。六拾進数、デジタルの文字が数字を次々と繰り上げて表示される単調な動き。
それを追うごとにまるで目の前でコインを振られる催眠術の被験者のように
だんだんとまぶたが下がりそうになる。


 気づかれないように欠伸をした。


「寝不足か?」


目ざとく気配に気がついたのか、問題用紙に鉛筆を走らせながらゾロが聞いた。

「おしゃべりは厳禁ですよ」

試験官を真似たがゾロには堪えていないようだ。

「寝てネェの?」

此方を向かずに話し続ける。
こういうことはそういえば前にもあったなと思いながら、ナミは椅子の背もたれに体重を預けた。

「レポートで徹夜、最悪よ」

一月半ばのこの時期、大学も前試験とレポートが吹き荒れる。今は一般教養が殆どだけれど一年生の後期にこういう単位を落としてしまうと後々まで響く。そう聞いて一週間の内、みっちり1コマから4コマまで講義を受けていたら眩暈のするようなレポートの応酬が待っていた。

 テストは好きだ。

もう一回こっきりで当たるも八卦当たらぬも八卦、時間がくれば終わってしまうので後腐れが無い。いや後腐れは実際のところあるのだが、それは来年度の春にならないと分からない。しかし、こういう課題ものは「今日こそはやらなくちゃ」と思いながらずるずると欲望に負けてしまうので嫌いだ。
 現実問題、レポートはあともう3つある。ひとつはもう半分は出来て居るけれど、もう二つは手着かずだ。締め切りの早いものから片付けていたのだがここに来て馬力が途絶えた。締め切りが遅いのが唯一の救いだった残りのレポートの提出期限は明後日と迫っており、昨日も寝たのは夜明け前。

この一週間、慢性的睡眠不足。

とびっきり濃いコーヒーを飲んできたのに、暖かいこの部屋ではそんなもの何の役にも立たなかった。
手持ち無沙汰も相俟って、生欠伸ばかりだ。

「寝てりゃいいじゃネェか」

ゾロは利き手の左手は維持したままで、背後のベッドを指差した。
一瞬どきりとしたけれど、なにに「どきり」なのかナミには分からない。

「そういう訳にも行かないでしょ」

コレで時間給を貰って居るのだ。
眠いから寝ていたのでは家庭教師失格と言うよりも働く人間として失格だ。
それでももう一度欠伸をしたら、ゾロは伝染る!とナミを睨んだ。ゴメンと肩を竦め、ゾロの座る椅子より一歩下がりながら大きく背伸びをした。同時に見られないように欠伸も。

でも、どうしようもなく目蓋が下がる。
寝不足で頭痛もする。
こめかみをもみ目蓋を強く押す。少しは和らぐような気がした。

「携帯」



「アラーム鳴るんだろ、起こしてやるよ」

悪魔は囁く。
今日くらいいいだろうと。
誘惑の一言は余りに甘美だ。

「そんな青白い顔、見たくネェしな」

そんなに青白いかしらと化粧ポーチから小さな鏡を出す。ニキビは出来ていないけど、肌は荒れてる。あぁビタミンCでも飲もうかしら。でもその前に今日は栄養ドリンク買ってこないと。この眠気ではきっと今夜は撃沈してしまう。ゾロの家を出たらコンビにまで出かけよう。
それに隠してはいるが目の下に隈ができているし、口唇は少し白っぽくかさついている。女子失格だ。
そんなことが目に付いたが、血色はそんなに悪いだろうか。いつもより青白いような気もするけど。
ただ頭痛は酷くなるばかりで首の後ろを揉んでもストレッチをしてもちっともよくはならない。


「五分だけでも、目ェ閉じてろよ」


ちょっと違うぜとこちらを見もせず言った。


上手に甘い言葉で優しく誘う。気遣いは悪魔の甘言に等しい。

だめよ。

駄目、駄目、駄目。



その言葉に甘えたわけじゃないと言い訳しながら床に座りベッドに凭れた。
年始に一度挨拶に来て、今日は今年初めの家庭教師。
初日からこんなのでいいのかなと思いながらナミは人間の三大欲求に負けた。
課題が溜まっていたからここの所きちんと眠っていない。

それからもうひとつの理由も。

アレを失恋と呼ぶなら、まだ二週間。
バイトに行くのが少し辛かったが、忙しさの所為で忘れてしまった。
相変わらずのスタッフと相変わらずの関係を続けている。無論、失恋した相手とも。
一度はバイト先を変えようかとも思ったけれどそれもまだ思い切れずに居る。

 らしくないと思いながら。

 店にいる間は何もないようにしてるけど、一歩外に出て独りになり家に帰った頃にはいろんなことを考えている。夜はもっと沢山のことを思い出してしまう。いろんな種類の後悔やさみしさがこみ上げて少し泣きたくなる。

“何も手につかない”

多分それは逃避。レポートがいやなのか失恋のことを考えることがいやなのか。
もういいやと思考を放棄したって眠ろうとしても厭な夢ばかり見る。夜中に何度も目が覚める。
家のベッドだと巧く眠れない。通学してるバスが一番良く眠れる。
不意に襲う眠りが一番深いような気がする。


未だ頭痛がする。



頭の後ろに羽毛布団の柔らかい感触。
ベッドカバーの匂い。
ゾロの家の匂い。

ここはウチじゃない。
ゾロの部屋。

よく似た構造で、この一階上がわたしの部屋。
なのに匂いも違う、インテリアも違う。ベッドの位置も明かりの色も。
よく知っているのに、知らない場所。
なんだかそれが妙に居心地がよくて、ほんの5分だけと思いながら目を閉じた。






                               *




最後の一問を解き終え鉛筆をおいた後、出来たとフィニッシュの合図。
大欠伸とともに退屈していたナミの相手をしようと振り返ろうとした。
そのとき、背後からすぅと小さな音が聞こえた。

“テスト中に余所見はいけません”

そう怒鳴る試験管は今や夢の中。
携帯電話を握り締めて、自分のベッドに凭れて眠っている。
俯いた頭からは橙色の髪の毛零れて、顔を覆うようにしていた。
薄い目蓋は胡桃色の瞳を隠している。
胸が柔らかく上下して規則正しく緩やかなリズムを刻んでいる。


「俺んち来て爆睡してんじゃネェよ」


目を瞑るだけなんて言って、五分はゆうに過ぎている。

椅子から離れ、足を床に踏み出す。
そんなに広い部屋ではない。だから傍に近寄るのも然したる距離ではない。
立ち上がると自分の影が彼女に掛かる。それほどの距離だ。
膝を斜めに崩して居るナミを真正面から見詰めた。顔は見えない。
寝顔は、ここからでは見えない。

今日部屋のドアを開けたときから気に掛かっていた。
眼の下は少し青く、常に眉間に皺があった。常に左手は強く握られているか、両腕を組んでいた。

 何かから自分を守ろうとするように。



今はどんな顔をして居るのだろう。



何かを耐える顔だろうか。
何かに怯える顔だろうか。
何かに苦しむ顔だろうか。


それとも。







傾ぐようにして眠るナミの寝息は一定で起きる様子は無い。
床に膝を着く。両手も彼女の膝を跨ぐように着いて顔を覗き込む。

自分の身体が光を遮断し俯く彼女の顔は不鮮明だ。
ただ、一つ安心したのはその顔が思ったよりも渋く強張っていなかったことに安心した。


「ナミ」



あの時。



去年のクリスマスが終わる瞬間。自分の目の前で子どものように泣きじゃくった。
零れる涙が綺羅星のごとく。
次から次へと、いまや閉じられた瞳から零れ落ちていた。まるで、流星群のように。

泣いていた。
誰の為に泣いてた。
そいつを見つけだして一回ぶん殴ってやりたい。
何で泣かした、そう問い詰めて。

その理由の正統性如何に関わらず、如何なる理由も許さないけれど。

あんな風に大人の女が、いやナミが泣くなんて思ってもみなかった。
自分が知る彼女はいつだって負けん気が強くて自信があって、
あんな風に負の気持ちを自分などにはぶつけてくるとは思わなかった。
いつもは意地の悪い真意とは真逆の言葉を羅列してしまうのに、
あの時だけは抱きしめてやりたいと切に願った。

自分よりも年上のナミを守ってやりたいと思った。


だけどこの腕では足りないという歯痒さに胸を焦がして。



欲しいのはこの腕ではないと云われる事を恐れたけれど、でもどうしてもどうしても。
その涙を地面に落ちる流れ星、受け止めたいと思った。


あんなに、引き絞るように

あんなに、苦しそうに。

あんなにも。



理由は、詳しい事は知らない。
好きだった奴が結婚するとか言っていた。
自分は見たことの無い奴だと思うし、そいつの事は知りもしない。
だけどナミが好きになった相手だから悪い奴ではないんだろうけど、俺の眼から見りゃ碌出無しだ。

ナミをあんな目にあわせて居るのに、それに気がつきもしない。
なんでこいつを選ばなかったんだと、実際にそうあっては困る事を考えた。



年が開けて、一緒に行った初詣。
大凶が出たと言って、りんご飴が食べたいと大きいのを二つも買って、
無理やりはしゃいで居るように見えた。
空元気も元気のうちだというけれど、あの日のナミがどちらだったかなんて分からない。

本当はあの夜、ずっと手を繋いでいたかった。
夜の凛とした耳の痛くなるような静けさ。
冬の夜空に輝く月明かり。
ナミの暖かな手。

繋いでいないとまた立ち止まって泣き出してしまうんじゃないかって思った。

だから強く強く握って彼女の前を歩いた。
留まって泣いては駄目だと。
一人で歩けないなら、今は俺が前を歩いてやると自惚れながら。


あのときに比べたらナミは少しは元気になった。
傍目にはそう見える。

 でも心の中までは分からない。

あの日不意に見せた涙はきっとアクシデント。
お互い想定外の事態。
俺に心を許したとは思わない。



「なぁ」



彼女の膝を跨ぎ、距離を縮める。
至近距離の寝息は自分の鼓動とシンクロするようだ。

ナミは起きない。

「なぁ、誰だよ」

床に落ちた右手に左手を滑り込ませ重ねる。
あの夜と同じ温度。
とても温かい。

「お前を泣かせたの」

夢の中でこの声は聞こえているだろうか。
いやない。
この声が届くはずも無い。

「どんな野郎だよ」

ナミの事を何も知らない。
どんな奴に心を奪われているのかだとか、好きな物も何も知らない。

「眠れねぇのも、そいつの所為か?」

けれど傍で問う。
聞こえなくとも耳に注ぐ。

なお、問う

「お前を泣かすのに」

引き絞る声、震える肩、零れた涙。
あんなものもう二度と見たくない。
自分が前線に立つ事もできぬ戦場は、違う世界で起こる御伽噺に過ぎない。
守る術が無いから口唇を噛むだけ。



「お前は未だ好きなのか」



この問いには答えは要らない。




「なぁ」





「泣くなら」



ナミの左手には携帯電話が握られている。同じように手を繋ぎたくて指をはがす。
きらりと、床の上に光る何か。

指輪だ。

クリスマスに投げるように渡したもの。
見込みは無いかもしれないと、
そんな風に半ば思ったけれど雪の王冠のような小さなリングは小指が被ってくれていた。

“なんだ、ちゃんとつけてくれてんのか“

すこし大きかったのかその上から小さな指輪を嵌めていた。
リングが抜けないように、銀色の封印がしっかりと嵌められている。
おもちゃのような二つの指輪。
見た途端に咽喉の奥が少し痛くて空咳をして誤魔化した。

そうだ、違う、絶対に駄目だ。

首を振る。
駄目だと否定、後に悔やんだ。


絶対に駄目だ。


俺の為に泣いて欲しいなんて。
俺の為に泣くことなんて。




よろこぶ顔が見たい。
たったそれだけ。




それだけでいいのに。







「ナミ?」


顔に掛かる髪の毛に触れる。柔らかなオレンジの香り。
香水だろうか、それともナミの家の匂いだろうか。
現われた顔は穏やかで、目蓋は相変わらず優しく閉じられている。

胸が震える。
無理矢理に重ねた手が脈打つ。
頬に掛かるナミの髪の毛。

それから、体温。

「起きろよ」


物言わぬ口唇と言う名の花。
もう、この口唇から悲しみの言葉が二度と零れぬよう祈る。




「起きネェと」



制限時刻、四十五分。
アラームは鳴らない。












「痛…」

突如鳴り出したアラームはけたたましく鼓膜を叩いた。
滑らかな眠りから無理矢理引き剥がさす暴力的なまでのヴァイブレーション。
倦怠感は驚きとすり替わって一瞬で消え、目をあけると眼前に碧色の髪の毛と大きな目が見えた。

「ウ、わァ!」

そのあまりの近さは驚くに値するべき距離で、鼻先十センチの近さ。
その距離の事態が飲み込めなくて思わず防衛本能のように膝を立てたらゾロの胸にクリーンヒット。
びっくりさせないでよと言いながらも彼の押さえた胸を撫で摩った。

「寝相悪ィ」

ゴメンといいながらなんでそんなところにいるのかは分からないけど、
寝入ってしまったバツの悪さからゾロの未だ薄い胸を撫でるだけにしておいた。
最低だと罵られながらゾロはあたしのおでこをちょっと叩くと鼻先にテストの回答を突き出した。

「出来栄えは?」

「俺に聞くのかよ?」

相っ変わらず可愛くないけど、45分があっという間だった。
一体どのくらい寝ていたんだろうと頭を抱えた。
家庭教師失格だ。

でもお陰で頭が酷くすっきりした。なんだか妙な夢を見たような気もするけど憶えていない。
ただ、顔の見えない誰かがわたしの首に口唇を埋め、
優しく抱きしめてくれるような少し幸福な夢だった、そんな気がする。
それはわたしの叶わなかった希みが見せた欲望だとしたら哀しいけれど、
眠りから目覚めた時未だ微かにそのぬくもりが残って居るような気がした。多分それもまやかし。
でもとても優しい腕だった。


それじゃぁとゾロから受け取った解答用紙を鞄に入れて立ち上がる。
ゾロはさっさと帰ってレポートでもしろよと憎まれ口を叩きながら手を上げた。
それはいつもの、さよならの合図。

玄関でお見送りしてくれるおばさんの顔は直視できなかったけど、
猛反省の意図を込めて深々と頭を下げた。ゾロはこの事を彼女に話すだろうか。
話すにしても話さないにしても大失態だ。


ワンフロア下のドアを開け、ただいまと声を掛けた。
姉のノジコがちょうどお風呂から出てきたところで、お帰りと返してくれた。
「今ちょうどいいかもよ、先に入っちゃえば」
ようやく飛んでくれた倦怠感と睡魔の残りはシャワーで洗い流してしまおうとコートをノジコに預けた。
クレンジングからと髪を結んだ矢先、ノジコがとんと肘でつついた。


「あらぁ、ナミ。アンタ、カレシでも出来たの?」
「なにがよ」

ジェルのクレンジング剤を手で温めながらニヤニヤしている姉を見る。ふぅんなんてもったいぶった後、
わたしの首をちょんと指で指した。
「だぁってこれ、キスマークじゃない」


「嘘!」

洗面台の鏡に向って必死に首を動かすと確かに髪に隠れるようなところに赤く染まった場所がある。
よくよく見ないと分からない、まるで淡紅を一撫でしたようなけれどもはっきりとした証。

「なによこれ!」

キスマーク。
そんな覚えは一切ない。
潔白なのに冤罪を着せられた容疑者っていうのはこんな気持ちがするもんだろうか。
いや違う、今はそんなこと言ってる場合じゃない。


「嘘ってアンタ、自分で分かるでしょうが」


分からない。
分からないから驚いているんだ。
まさか夢で見た事が現実をなぞった。そんなファンタジーを信じられるほど純粋じゃない。


…あのときだ。


あんな近い距離であいつは何をしてくれたんだ。


証拠は無いけど確信だけはがっちりだ。
でなけりゃ一体誰の仕業だというのか。

煮えるような気持ちで歯軋りするナミを他所目にノジコはナミのおしりを軽く叩いた。

「ナミ」

あぁ。

自立と自堕落は違うなどという始まりで説教が始まるんだろうか。
いや説教ならいいけどノジコはどこまで知ってて何を云うんだろう。
冤罪だけど冤罪で済まされない。
そんな心配をしながらナミは間抜けな格好でノジコのほうを向いた。

「アンタももう大人なんだからこういう事は言いたくないけど」

お姉ちゃんというのはどうしてこうも母親寄りの言葉を選ぶんだろう。
歳もそんなに離れてないのにいつだって自分より先に居る。
先に生まれたものと後に生まれた宿命と言ってしまえばそうなんだけど、
いつまで経ってもあたしは妹のまんまでお姉ちゃんは時に母親より恐ろしい。

お姉ちゃん、誤解ですといったら信じてくれるだろうか。



「ナミ」

「ハイ」

まるで子どもの時のようにしゅんと肩を縮めて返事をした。







「予防はしっかりね」





にこりと笑って洗面台を後にするとごゆっくりと軽やかに笑いながらドアを閉めた。

「ノジコ!」


誤解よ。
ノジコ!お願い信じて。



叫びは空しく空回り。ノジコはキッチンで鼻歌交じりに祝杯だなんて言いながらきっとビールを飲んでいる。
きっと明日の夜にでもあたしがいない間にベルメールさんと一緒に酒の肴にされるに決まってる。居もしない彼氏の事を詮索しながら家に連れて来ればいいのになんて言いながら。
それもこれもあいつの所為だ。

 眠気は飛んで倦怠感も消え失せて今度は怒りで沸騰しそうだ。
ちょっとの間目を閉じてろなんて、一瞬でも優しい事云うななんて思って損した。





今に見てなさい。


このリベンジはいつか必ず。
そしてもう二度と誓ってあいつを優しい子などとは思いませんと心に決めた。


「あのクソガキ!」


ある人から「小ネタくださいリクエスト」をしたところ、唯一くだすったのが某ホニャララ氏
此処では名前を出しますまい。匿名希望だったので(笑)
この方去年非常に君恋シリーズだけには物凄い早いレスポンスを頂いた方でした。
その節はどうもありがとうございましたv
一年前の事なのできっと憶えておられまいと存じます。約束を果たす時がやってきました。
リクエストは“居眠りしちゃったナミの胸元にキスマーク”だったのですが、
それじゃぁお母さんにバレちゃうでしょうと言うことで首にさせていただきました。
と言うか、ノジコを出したかったのかも。
そんでもってなんとな〜く進展かな?一歩進んで二歩下がる的シリーズなのでこれでも前進。
ゾロ側が書けたのが楽しかったv

あと因みにノジコにはカレシ持ち。多分年上。スポーツ大好きなアウトドア派。
スノボとか行くようなタイプ…って誰だろう。因みにエースは除外願います。

Please close this window

inserted by FC2 system