HAPPY LIFE
presented by ぷーちゃん

第十七話


深夜だというのに、派手なクラクションの音がして、「来てやったぞぉ!!」と叫ぶ
声がする。まだ30分もたっていないだろう。
「やっぱ、夜中は道が空いてんなぁ〜〜首都高ガラガラvv」
明るいシャンクスの声が響く。
ジャガーの後部座席から、ミホークがゆっくりと降りてくる。
男達のベンツも路肩に停まってはいるが、ジャガーとベンツ・・・
いったい何者なんだという視線が、シャンクスとミホークに注がれている。

「おう!悪ぃな!こいつがさ、あいつらに金借りちまったんだよ。」
「おぉ!これは、綺麗なお嬢さんだ。それで、どなた?」
「惚れた女。」「ナミです。・・って、ゾロ!!!!」
「はじめまして。ゾロの父です。」
「あっ、はじめまして、ナミです。」

「お前ら、人待たせて、呑気に挨拶なんてしてんじゃねぇ!金持ってきたのかよ!」
「これは、また、言葉づかい悪いねぇ〜〜」
「失礼。私、こういうものですが。」ミホークが律儀に名刺を差し出す。薄暗い街灯
の明かりでそれをチェックする男達の顔色が変わる。

「それで?おたくら、どこの金融さん?」
「うちは、クロヒゲクレジットだ。」
「あ〜〜ティーチさんとこね。相変らず、あくどい商売してんだろ?エドワードの親
父の耳に入ったら、どうなんのかねぇ〜〜」
エドワードの名前を聞いて、一瞬怯んだ男たちが、虚勢を張るように大声をだす。
「それよりか、金、2000万、耳を揃えて持ってきたんだろうな!」

その時、低い排気音を響かせて、ムスタングが到着した。
「社長、遅くなりました。」
「いや、遅い時間にすまない。なにしろ息子から初めての頼まれ事なのでね。」
穏やかに微笑んだミホークが、ロビンから紙袋を受け取る。
「ゾロ君の頼みなら、断れませんわね。」
深夜だというのに、一分の隙も無い姿でロビンが微笑み返す。
「親父、金持たないで来たんだ・・」
「いくらなんでも、家にそんな大金は置いてない。」

「では、契約書を拝見させて頂こうか。」
「そんなもの、ここに持って来てるわけねぇだろうが!」
「それでは、契約書のある所に、行った方がよろしいかな?」
男達の一人が、慌てて電話を掛け始める。

「ところで、ナミさん、彼らから、いくら借りたのですか?」
「あの・・・1500万円ですが・・・振り込まれたのは利息を引いて1000万円
とちょっとでした。」
「なるほど。それでは、スモーカー君を呼ばなくてはならないかな?」ミホークがロ
ビンの顔を見る。
「今から起こしたら、不機嫌でしょうね。彼v」と、ロビンが応じる。

スモーカーという名前を聞いて、男達の一人が「兄貴、まずいですよ、スモーカーっ
て言ったら・・・」と、囁いている。
弁護士スモーカーの名前は、金融業界では、有名だった。明らかに法定利息を超えた
金利で金を貸す、いわゆる闇金の彼らにしてみれば、事が表沙汰になれば、元金の回
収どころか、廃業の憂き目を見ること必至であった。

「1500万。1500万でいい。契約書は事務所にあるから、今から持って来させ
る。あんた達も、面倒なことにしたくネェだろう?」兄貴と呼ばれた男が、卑しげに
条件を変更する。
「さぁ、どうしようかねぇ・・・私達は別に面倒でも構わないが、ゾロ、どうする?
お前の金だ。お前が決めなさい。」
「ナミが自由になるんなら、俺はどうでもいい。」
「では、借りた金額ということで、手を打っておくかね。」
男たちに安堵のため息が漏れる。
「いいのかぁ〜〜ゾロ、大損だぞ!」シャンクスがチャチャを入れる。
「借りた金返すんなら、文句ねぇだろうが。廃業にでもなって、後々恨まれても困る
からな。」ゾロがナミを抱き寄せる。
「そういうことねv」シャンクスが肩を竦めて笑う。

「後は私たちで大丈夫だから、ゾロ君、彼女を連れて先に帰りなさいな。」ロビンが
不安げなナミを心配する。
「あぁ、悪ぃな・・・ナミ、とりあえず荷物纏めろ。」
「えっ?」
「ここにいて、また変なヤツラが来たら、危ねぇからな。とりあえず、今夜は俺んち
来とけ。」
「でも・・・あの人は?」
「あぁ、ロビン?親父も残るんだろ?」
「あぁ。」ミホークが頷く。

目まぐるしく変化する展開に、ナミは状況把握が追いつかない。
「いいの?」
「俺がそうしたいんだから、そうしてくれ。」
「わかった。」

部屋に荷物を取りに行くナミを横目に、3人が目配せを交わす。
「ゾロ君vいつの間にあんな可愛い子を彼女にしたの?」
「まだ彼女じゃねぇよ。」
「なんだ、手ぇ出してねぇんだ〜〜〜」
「ナミはそんなんじゃねぇんだよ!」
「じゃ、これから口説くんだvv」
「そうだよ!悪ぃかよ!!」
「借金のカタに、俺と付き合えとか、卑怯なこと言うんじゃねぇぞ!」
「そんなこと、言うか!馬鹿野郎!」

深夜、柄の悪い男達を無視して、高らかな声で交わされる会話は、
ナミの部屋にもまる聞こえで・・・
いったい、どういうことなのかと・・それでもナミは一人で赤面していた。

簡単に荷物を纏めて出てきたナミを見て、ゾロが「親父、ありがとな。助かった。
シャンクスも、ロビンもありがとう。」と頭を下げる。
その横でナミも慌てて頭を下げた。
「私も、お前の役に立てて嬉しかった。」
「あぁ、すげぇ役に立った。」とゾロが破顔する。

「じゃぁ、後よろしく頼むわ!」と言って、片手をあげ、ナミの手を引いてジャガー
に向かうゾロの後をシャンクスがついて来る。
「なんだよ、シャンクス!ついてくんなよ!」
「お邪魔虫は退散すんだよ!」
ミホークとロビンが顔を見合わせる。
「こっちに来たって、お邪魔虫なんだよ!」
「どうせ邪魔するなら、こっちの方が楽しそうだからな!」

「シャンクス、報告書待ってるぞ!」ミホークが高らかに笑い、父親のそんな冗談め
いた発言を初めて聞いたゾロが苦笑する。
「ついてくるなら、運転しろよ!」と、ゾロはナミの手を握ったまま、後部座席に乗
り込む。
「いちゃつくんなら、帰ってからにしろよ!」と、シャンクスが笑い、ジャガーは走
り去る。

「惚れた女か・・・」ミホークが呟き、空を見上げるのを、ロビンが寂しげに見守
る。
「ゾロには、教えられてばかりだ。」
「いい子に育ちましたもの。」
「あぁ・・・君を随分待たせてしまったかな?」
そう言って、ロビンを見つめたミホークに、ロビンは艶然と口の端を上げて目を細め
た。

END


inserted by FC2 system